大統領令(Executive order)は、強力なツール?

 トランプ次期大統領の就任式が終わったら、どのような大統領令(Executive order)がどの程度出されるのかと、ビジネス界は身構えています。大統領とは、法律、憲法などで与えられている大統領の権限を行使するために、大統領が出すことが可能な命令です。

政党間の対立が激しく、重要な法律の議会での制定が難しくなっている現在においては、議会の関与が不要である大統領令が、あたかも法律制定の代わりのように利用される傾向にあります。

連邦政府には、行政の他に、立法と司法がありますが、立法では、上院下院の両院があり、全議員の総数は500名を超えますから法律制定過程で反対意見にさらされます。また司法は、訴訟提起がない限り、裁判所が判断を行うことは出来ないという制限があります。これに対して、大統領令は、理論上、大統領が1人で紙とペンのみで出すことが可能です。(実際には、スタッフや省庁のアドバイス等を受けているはずですが。)

確かに、大統領は、憲法や法律で認められる大統領の権限の範囲を超えた大統領を出すことできませんし、議会がその大統領令に反対の場合は、その内容を覆す法律を制定することが可能です。また、憲法や法律違反の大統領令であるとして、訴訟が提起される場合には、裁判所で判断され、覆される可能性もあります。

しかし、これらの抑止力は、それほど強力ではない場合が多いのです。二大政党間の対立が激しい議会では、大統領の政党と同じ政党に属する議員が、大統領令を覆すような法律を制定するインセンティブはありません。たとえ、大統領の政党と異なる政党が議会で多数を占めていた場合であっても、可決した法律に対して大統領が拒否権(Veto)を行使すれば、上院および下院で3分の2以上の多数で再度可決されなければなりません。二大政党間の対立が激しい現在の議会では、3分の2以上で再度可決することは非常に難しいです。裁判所に関しても、利害関係者による訴訟提起がなければ、裁判所が勝手に判断できませんし、一審の判断で終わるわけではないので、時間もかかります。

大統領は前大統領が出した大統領令を、いとも簡単に新しい大統領令で覆すことが可能ですから、結局、大統領令を覆すのは次の大統領が出す大統領令ということになります。

2017年、2021年、2025年と4年ごとに、コロコロと大統領令によって政策が変更されてしまっては、予測可能性を重視するビジネスにとっては大変です。憲法上、大統領は2期のみと決められていますから、2029年には違う大統領になって、新たな大統領令によって、それまでの大統領令が覆される可能性もあることを考えればなおさらです。

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