例外条項の落とし穴?―トランプ関税

 トランプ次期大統領が、メキシコとカナダに25%関税をかけると発表したことがニュースになっていますが、「あれ?アメリカは、メキシコとカナダの間にUSMCAUnited States–Mexico–Canada Agreement、米国・メキシコ・カナダ協定)が締結されているはずなので、そんなことをしたらUSMCA違反なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

実は、USMCAには、Essential Securityという安全保障のための例外条項が含まれています。英文をそのまま記載すると、「Nothing in this Agreement shall be construed to: … preclude a Party from applying measures that it considers necessary for the fulfilment of its obligations with respect to the maintenance or restoration of international peace or security, or the protection of its own essential security interests.」意訳すると、この条約の如何なる条項も、国際平和安全の維持または回復、または自国の安全保障利益の保護に関して重要な義務を履行するために必要と考える措置を当事者が講じることを妨げるものではありませんということです。多分、メキシコからアメリカに不法移民が流入しないようにすることがアメリカの安全保障上の利益であって、それに対抗する必要な措置が関税を高くすることと解釈するのでしょう。

USMCAが締結される前には、アメリカ、メキシコ、カナダの間では、NAFTANorth American Free Trade Agreement、北米自由貿易協定)があり、その中にも、安全保障のための例外条項が含まれていたのですが、内容が若干違います。英文をそのまま記載すると、「… nothing in the NAFTA shall be construed to prevent any government from taking any actions that it considers necessary for the protection of its essential security interest taken in time of war or other emergency in international relations」と記載されています。つまり、必要な措置がとれるのが、戦争または国際関係における緊急事態であると、限定的に規定されていたのです。

このNAFTAの例外条項と比較すると、USMCAの例外条項はかなり広く解釈できる余地があります。

条約に関わらず、契約交渉でも例外条項の交渉に向けられる労力は、メインの条項より少なくなりがちですが、例外条項の重要性を見落としてはならないと思い知らされます。

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