シェブロン・ドクトリンを覆す最高裁判決は次期政権に影響を及ぼすか?

 いくつかの大きな米国最高裁判所の判決のニュースにかき消されて、20246月に出されたシェブロン・ドクトリンを覆す最高裁判決(Loper Bright Enterprises v. Raimondo)はあまり大きく報道されなかったように思います。ただ、この判決は、今後の行政機関と各省庁による規則制定に大きな影響を及ぼしうる判断です。

シェブロン・ドクトリンというのは、1984年の判決で、アメリカ環境保護庁(United States Environmental Protection Agency (EPA)) Clean Air Actを解釈して制定した規則の違法性が争われたものです。

シェブロン・ドクトリンを、誤解を恐れずにシンプルに説明してしまうと、行政機関が制定した規則が依拠している法律が特定の問題に対して沈黙している、または曖昧であると判断した場合は、法律の許される解釈の範囲内であれば、行政機関の専門性を尊重するという判断基準です。すごく簡単にいうと、裁判官は専門的な知識がない場合も多いので、法律で許される解釈の範囲を逸脱しているといえない場合には、専門家である行政機関の判断を尊重しましょうということです。

この判決は、行政機関が法律の権限の範囲内で行動したかどうかは、専門家の意見を聞くこと自体は構わないが、最終的には裁判所が独立して判断すべきであるとしたものです。この判決は結果的に、今までシェブロン・ドクトリンによって行政機関の権限とされていたものを、司法と立法に取り戻したともいえるような内容です。

シェブロン判決は、アメリカ環境保護庁が制定した規則に関するケースでしたが、実際には他の行政機関にも適用されていたので、行政法では一番と言ってよいほど重要な判決でした。しかし、これが覆されたことで、規則を制定する各省庁は、慎重にならざるを得ないと思いますし、新たな規則を制定した際に、それに反対する者が訴訟を提起しやすくなったように思えます。

次期政権は、規制撤廃を主張しているので、Loper Bright Enterprises v. Raimondo判決は、政策への問題をあたえないようにも思えますが、実は、行政機関の権限を制限する方向性ということで、影響があるのではないかという気もします。

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