驚くような政治広告が許されるのは何故か?

 大統領令で、United States Agency for International Development (アメリカ合衆国国際開発庁「USAID」)やDepartment of education(教育省)を閉鎖しようとしていること対して、大統領にそのような権限はないと答えた元共和党全国委員会のメンバーで現大学教授は、何故共和党の議員が反対をしないのかとの質問に対して、反対すればイーロン・マスクが巨額の資金を投じて共和党の予備選挙で当選しないようにすることを恐れているからだと答えていました。

法律家として興味を持つのは、どうしてアメリカでは、企業等が選挙広告にこれだけ巨額の資金を投じることが可能なのかという点です。

アメリカの選挙シーズンにアメリカに住んでいたことがある方はお分かりだと思いますが、テレビを見ていると、その地域の選挙候補者に関する選挙広告があふれています。それも、信憑性に問題があるような広告や、誤解を招くような内容の広告も多々あります。日本の公職選挙法によれば許されないようなテレビ広告が、アメリカではどうしてあふれかえっているのだろうと疑問に思われるかもしれません。

この疑問を解き明かす大きなカギが、Citizens United v. Federal Election Commissionという2010年に判断された最高裁判決にあります。

この最高裁判決は、Bipartisan Campaign Reform Act of 20022002年超党派選挙活動改革法、「BCRA」)の違憲性を判断したものです。このBCRAは、一企業及び労働組合が、候補者を明示的に指名して、予備選挙の30日以内または総選挙の60日以内に、5万人以上の人々に届くことが出来るような方法で、一般財源を使って広告を行うことを禁じています(選挙活動支援のために分離された特別基金(political action committee (PAC))を設立することは可能で、PACで受け取る資金は、企業の株主及び従業員、労働組合の場合はその組合員の寄付に制限されています)。Citizens Unitedは、2004年の大統領選挙の時期に、マイケル・ムーア監督の2001911日の同時多発テロのブッシュ大統領の対応を批判した「Fahrenheit 9/11」という映画のテレビでの広告が、この法律に違反すると連邦選挙委員会に対して訴えましたが、選挙委員会は、法律で定められている期間内に作成された証拠がないとして却下しました。その後、Citizens Unitedは、「Celsius 41.11」という大統領選に影響を及ぼすドキュメンタリーを作成して、広告しましたが、それに対して連邦選挙委員会がBCRA違反であると判断したことで、訴訟が提起されました。

最終的に最高裁判所は、僅差でBCRA203条の企業および労働組合によるすべての独立した政治的支出の禁止が、アメリカ合衆国憲法修正第1条の言論の自由の保護に反するとの判決を下しました。最高裁は、1990年に企業が選挙において候補者支持や反対を表明するために資金を使用することを禁止する州法を腐敗を引き起こすことを懸念して禁止した州法を合憲であると判断した先例を覆しました。

このようにして、資金力のある企業が自己の利益のために特定の候補者を支持または反対する広告を自由に出すことが出来るという現在の政治広告合戦が選挙前のおなじみの光景になったのです。

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