アメリカの奴隷廃止後の国内産業保護措置だった?
アメリカでは、1930年関税法(Tariff Act of 1930)307条(19 U.S. Code § 1307)で囚人による労働、強制労働によって採掘、製造、生産された物品がアメリカの港に入港することを禁じています。
「うわー、アメリカは、こんなに早い時期から人権保護の意識があったのですね」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは、誤解かもしれません。実は、このような規定が置かれたのは、労働者の人権を保護するという観点からではありませんでした。
当時南北戦争が終わって、やっと正式に奴隷解放が行われるようになると、次のような問題が認識されるようになりました。依然奴隷的なシステムを認めている国の安い労働力を使って製造、生産された物がアメリカに輸入されると、アメリカ国内の生産者の競争力がなくなるとの懸念です。その対抗策が、強制労働によって製造や生産された物品の輸入禁止という措置でした。
この条項が再び脚光を浴びたのは、中国の新疆ウイグル自治区で行われている強制労働が問題になった際です。中国の強制労働によって製造された製品のアメリカへの輸入禁止を強化するため、バイデン大統領の署名により「Uyghur
Forced Labor Prevention Act(ウイグル強制労働防止法)」が成立しました。この法律は、上記で説明した19
U.S. Code § 1307で禁止されている物品のアメリカへの輸入を防止を強化するためのものです。
確かに、ウイグル強制労働防止法は中国での強制労働を阻止する目的であると言われていますが、実際には、1930年関税法の307条が制定された当初の趣旨からぶれていないような気がします。
Congressional Research Serviceが1月31日付で出したレポートには、中国系企業による「de
minimis」免除の不当利用を阻止する方法の一つとして、ウイグル強制労働防止法の執行の強化と記載されている点も興味深いです。