全米に影響を及ぼす連邦地方裁判所の差止命令は妥当か?
特に第2次トランプ政権になってから、一地方の連邦地方裁判所が、トランプ政権の活動に対して、全米に影響を及ぼす差止命令を出したというニュースを頻繁に聞くようになって、全国的な差止命令の妥当性について議論がなされています。2025年3月20日、Congressional Research Serviceが第1次トランプ政権とバイデン政権下での全国的な差止命令に関してレポートを出しており、このような問題意識があることや、この問題を立法によって解決しようという動きがあることをご紹介します。このレポートの中で、「Nationwide Injunction(全国的差止命令)」という言葉が使われていますが、このような法律用語があるわけではないと注意書きされています。
差止命令には、「Temporary
restraining order」「Preliminary
injunction」「Permanent
injunction」と三種類があり、Temporary
restraining orderは、最初の一時的な差止命令で、訴訟によって最終的な判断が下されるまでの間の差止命令である暫定的な差止命令のPreliminary
injunctionを出すかどうかを判断するまでの本当に短い期間だけ出される差止命令で、Permanent
injunctionは、裁判所による本案判決に基づいて行われる最終的な差止命令ですが、上訴することは可能です。
2019年5月の演説で、当時のウィリアム・バー司法長官は、連邦裁判所が「20世紀全体で全国的に差し止め命令を出したのはわずか27件だけだ」と述べたそうです。しかし、このレポートによると、全国的な差止命令は、ジョージ・W・ブッシュ政権下で6件、オバマ政権下で12件、第1次トランプ政権下で64件、バイデン政権の最初の3年間で14件出されたとのことです。
第1次トランプ政権下で最も数多く全国的な差止命令を出したのはカリフォルニア州の連邦裁判所で(23件)、バイデン政権下で最も数多く全国的な差止命令を出したのはテキサス州の連邦裁判所(10件)だそうです。カリフォルニア州といえば、民主党が強い州で、テキサス州といえば、共和党が強い州です。つまり、大統領が所属する政党と反対の政党が強い州が全国的な差止命令を出しているということになります。
その理由の一つとしてレポートがあげているのは、フォーラム・ショッピング(forum
shopping)です。これは、簡単に説明してしまうと原告が自己に有利な判決を出してくれそうな法定・裁判官・陪審を求めて法廷あさりをすることです。例えば、連邦地方裁判所の支部だと、裁判官が2,3人しかおらず、その中の裁判官に以前の発言などから予想すると原告に有利な判断をしてくれそうだという場合に、例えば50%の確率でその裁判官に配点されると分かったら、何らかの根拠を使ってその連邦地方裁判所の支部に訴訟を提起するということが行われます。
この全国的な差止命令については、フォーラム・ショッピングが不当ではないかという議論とともに、一人の連邦地裁の支部の裁判官が全国的に差止めてしまってよいのかという議論もあります。本来であれば、クラスアクション訴訟を提起すべきところを、クラスアクション手続きを回避するために使われてしまってよいのかという問題もあります。そこで、連邦議会の法律制定によって、この問題を解決すべきではないのかという議論もあって今後の動向が気になります。