緊急事態宣言を理由とする関税
以前の投稿で、関税を課す権限は議会にあるが、議会が法律を制定して、その範囲内で大統領に関税を課す権限を与えることは可能であるというお話をしました。その法的根拠の中で、トランプ大統領による大統領令の最初の部分に頻繁に引用されている奥の手とも入れる法律があります。それが、1977年国際緊急経済権限法(50
U.S.C. 1701-1707)と国家緊急事態法(50
U.S.C. 1601-1651)です。
1977年国際緊急経済権限法は、国家緊急事態法によって緊急事態が宣言された場合に大統領がアメリカ国外を起源とする経済事項に対して行える行動を広く規定しています(50
U.S.C. 1702)。関税を課すことができると明確には記載されていませんが、現政権は、この大統領の権限に基づいて関税を課すことができると解釈しているようです。
ケビン・ハセット氏(Kevin
Hassett)がCNBCで3月の最初の週に関税によって国が得た収入が10年蓄積すれば、減税による減収を補えると話していたのを聞いて、違和感を覚えました。つまり、関税の根拠を緊急事態としながら、関税による収入が10年蓄積すると言っているのと同じと考えられるわけで、緊急事態が10年以上続くことを示唆しているように聞こえます。また恒久的な減税の減収を補う財源にするのであれば、緊急事態が永遠に続くということを前提にするのは、かなり不自然な解釈になるのではないでしょうか。前にご説明した1962年通商拡大法232条、1974年通商法201条、301条は、調査を行ったうえで、調査によって判明した一定の問題を解決するために関税を課すことを可能とする法律です。関税は税金のようなものですが、特定の問題解決のための手段にすぎない点で税金と違うので、問題が続くことを前提として減税による減収を補う手段というのは、若干違和感があります。