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2月, 2025の投稿を表示しています

共和党はどうやって減税法案を成立させるつもり?

  通常の法律を成立させるためには、上院では、以前お話ししたフィリバスター( filibuster )によって、 100 名の上院議員のうちの 60 名以上の議員が賛成しなければ、討論を終結( cloture )して投票に移ることが出来ません。現在、トランプ大統領と同じ政党である共和党所属の議員が 53 名ですので、通常の決議方法では、トランプ大統領が成立を目指している減税法案が上院で可決されません。そこで、奥の手として利用されるのが、「 reconciliation bill (財政調整法)」です。 reconciliation bill では、上院での討論の時間が制限されているので、討論終結の決議が不要となり、上院議員の過半数によって法案を可決することが可能です。 ただ、 reconciliation bill を制定するためには、それに向けての複雑な手続きが必要となります。 まずは、両院で同じ内容の budget resolution (予算決議)が可決されなければなりません。この予算決議は、 concurrent resolution (両院共同決議)なので、大統領による署名を必要とせず、法的拘束力を有しません。ただ、両院で reconciliation bill が起案される際に、この予算決議の内容に従う必要があります。この予算決議には、各委員会にその管轄に関連する直接支出( direct spending )、歳入、または債務上限の法律を変更するための法律案を作成報告するように指示する「 reconciliation instruction (財政調整指示)」を含まれる必要があります。このように直接支出( direct spending )、歳入、債務上限という限定があるため、これらに無関係なことを reconciliation bill という手法を使って法制化することができません。財政調整指示に基づいて各委員会で作成報告された法律案は包括的( omnibus )な reconciliation bill にまとめられ、上院と下院で決議が行われますが、上院と下院で可決した reconciliation bill の内容に違いがある場合には、通常の法律制定と同様の方法によって、調整解決する必要があります。上院と下院で同じ内容の recon...

通常予算が通らなかった時に政府閉鎖を防ぐ救世主?―「CR」

  予算の拠出をするためには、連邦政府が行動する権限を定義する法である Authorization (授権法)のみならず、 Appropriation (歳出法)が両院で可決されることが必要です。 アメリカ連邦政府の会計年度は 10 月 1 日に始まり、翌年の 9 月 30 日に終了します。そこで、この Appropriation (歳出法)は、 10 月 1 日までに両院で可決され、大統領の署名が必要となります。この通常の会計年度の予算の拠出を認める通常の Appropriation (歳出法)を「 regular appropriation bill (通常歳出法)」と言いますが、共和党と民主党の議員数が拮抗している場合や、上院と下院の多数派の政党が異なる場合などは、会計年度に間に合うように、すべての予算の分野については通常歳出法が可決されないことも珍しくありません。このような場合に、連邦政府閉鎖とならないように臨時に歳出を認める法が「 continuing appropriation bill (継続歳出法)」です。これは一般に「 continuing resolutions 」と呼ばれ、省略して「 CR 」と言われています。 CR は、通常の歳出法とは違って一時的に歳出を認めるものなので、期間が短いのが一般的で、前年度の歳出法を基礎に決められることが多いです。 Appropriation (歳出法)には、この他に、「 supplemental appropriations bill (追加歳出法)」というものもあります。これは、自然災害等の緊急で予想外の必要に応じて出されます。

ヴォート・ア・ラマ(Vote-a-rama)とは何?

 2 月 21 日、上院が予算に関していわゆる「ヴォート・ア・ラマ( vote-a-rama )」を開始し、すべての修正案投票を終えた後、予算決議案を可決したというニュースがありました。 予算決議の内容はさておき、この「ヴォート・ア・ラマ( vote-a-rama )」が何かと疑問に思われが方もいらっしゃると思います。 これを理解するには、 Congressional Budget and Impoundment Control Act of 1974 ( 1974 年議会予算・執行留保規制法、略して「 ICA 」)の 305 条 (b) の規定( 2 USC § 636(b) )を理解する必要があります。 まず、予算手続きには、まず両院での budget resolution (予算決議)が必要となり、この決議は Concurrent resolution (両院共同決議、内容は「立法の形式は Bill だけではない」をご参照ください)によって行われます。 ICA305 条 (a) で下院での予算決議手続きが記載され、 ICA305 条 (b) では、上院での予算決議手続きが記載されています。上院では、通常はフィリバスター( filibuster )が認められています。法案の投票に移る前、各上院議員が法案に関して討論を行うことが出来るのですが、 60 票以上の上院議員による cloture (討論終結)の決議がなされない限り、議員は フィリバスターにより時間制限なく討論を続けることが可能となり、投票が行われません。つまり、上院では 60 票以上の賛成なしに可決することが出来なくなります。しかし、予算決議については、この フィリバスターが認められていません。 実際に、 ICA305 条 (b) では、上院の予算決議に関する議論の時間が 50 時間までと決められていますが、法案への補正の数は、制限されていません。 50 時間が経過して時間切れになってしまった後に、審議されていない補正案が残っていることも容易に想像できますが、 ICA には、そのような場合の手続きをはっきりとは規定していません。一般に討論の時間切れになった時から実際の投票までの手続きの期間を「ヴォート・ア・ラマ( vote-a-rama )」と呼んでいます。このヴォート・ア・...

アメリカは何故パリ協定に何度も加入と離脱を繰り返せるのか?

  アメリカ合衆国憲法 2 条セクション2には、大統領に条約を締結する権限が認められていますが、締結のためには、上院議員の 3 分の 2 以上の賛成が必要です。 ただ、大統領は上院議員の 3 分の 2 以上の賛成が必要となる憲法上の条約しか締結できないというわけではありません。それ以外にも大統領が他国と Executive agreement (行政協定)を締結することが可能です。 Congressional Research Service (議会調査局)のレポートによるとこの Executive agreement にも 3 つのタイプがあると記載されています。 Congressional-executive agreement 、 Executive agreement made pursuant to a treaty 、 solo executive agreement の 3 つです。 Congressional-executive agreement とは、議会が二院制のプロセスを通じて制定した法律により承認する行政府の協定を言います。 これによって締結された例としては、 NAFTA ( North American Free Trade Agreement 「北米自由貿易協定」)、 WTO ( World Trade Organization 「世界貿易機関」)、 USMCA ( Agreement between the United States of America, the United Mexican States, and Canada 「米国・メキシコ・カナダ協定 」)です。 Executive agreement made pursuant to a treaty とは、大統領が上院で承認された条約に基づいて行う行政府の協定を言います。 solo executive agreement とは大統領の権限に基づいて行う行政府の協定とされています。これによって締結された例としては、気候変動に関する Paris Agreement (パリ協定)があげられます。 本題に戻って、条約やこれらの協定を離脱できるのかについてご説明しますが、その際には二つの側面から考える必要があります。まずは、国際法上の観点から離脱が...

驚くような政治広告が許されるのは何故か?

  大統領令で、 United States Agency for International Development ( アメリカ合衆国国際開発庁「 USAID 」)や Department of education (教育省)を閉鎖しようとしていること対して、大統領にそのような権限はないと答えた元共和党全国委員会のメンバーで現大学教授は、何故共和党の議員が反対をしないのかとの質問に対して、反対すればイーロン・マスクが巨額の資金を投じて共和党の予備選挙で当選しないようにすることを恐れているからだと答えていました。 法律家として興味を持つのは、どうしてアメリカでは、企業等が選挙広告にこれだけ巨額の資金を投じることが可能なのかという点です。 アメリカの選挙シーズンにアメリカに住んでいたことがある方はお分かりだと思いますが、テレビを見ていると、その地域の選挙候補者に関する選挙広告があふれています。それも、信憑性に問題があるような広告や、誤解を招くような内容の広告も多々あります。日本の公職選挙法によれば許されないようなテレビ広告が、アメリカではどうしてあふれかえっているのだろうと疑問に思われるかもしれません。 この疑問を解き明かす大きなカギが、 Citizens United v. Federal Election Commission という 2010 年に判断された最高裁判決にあります。 この最高裁判決は、 Bipartisan Campaign Reform Act of 2002 ( 2002 年超党派選挙活動改革法、「 BCRA 」)の違憲性を判断したものです。この BCRA は、一企業及び労働組合が、候補者を明示的に指名して、予備選挙の 30 日以内または総選挙の 60 日以内に、 5 万人以上の人々に届くことが出来るような方法で、一般財源を使って広告を行うことを禁じています(選挙活動支援のために分離された特別基金( political action committee (PAC) )を設立することは可能で、 PAC で受け取る資金は、企業の株主及び従業員、労働組合の場合はその組合員の寄付に制限されています)。 Citizens United は、 2004 年の大統領選挙の時期に、マイケル・ムーア監督の 2001 年 9 月 11 日...

Unitary Executive Theoryが最高裁で判断されるか?

  ロイターが「 'Unitary executive' theory may reach Supreme Court as Trump wields sweeping power 」(トランプ大統領が圧倒的な権力を行使するなか、「 Unitary executive theory 」が最高裁判所で判断されることがあるのか)という記事を載せていたので( 'Unitary executive' theory may reach Supreme Court as Trump wields sweeping power | Reuters )、 Unitary executive theory (直訳すると「統一行政府理論」)という理論の意味を調べてみました。 「 Unitary executive theory 」というのは、コーネル大学ロースクールのウエブサイトにも掲載されており( Unitary Executive Theory (UET) | Wex Legal Dictionary / Encyclopedia | LII / Legal Information Institute )、最近急に唱えられた理論ではなく、かなり以前から唱えられている理論のようです。 コーネル大学のウエブサイトの説明を日本語に直訳すると以下の通りになります。 統一行政府理論( UET )は、アメリカ合衆国憲法に基づく法理論であり、大統領が行政府に対して唯一の権限を持つという理論です。 UET の支持者は、この理論が 1787 年の憲法制定会議におけるバージニア計画に起源を持つと考えられています。 UET の最も論争を呼ぶ側面は、大統領の解任権限です。 UET によれば、大統領は行政部門に任命された下級官僚を解任する権限を持つとされています。何人かの大統領は、前任の大統領が任命した行政官を解任することでこの権限を行使してきました。 2021 年、最高裁判所は、コリンズ対イエレン事件において、大統領が議会によって任命された上級行政機関の職員を任意で解任できると判決を下し、したがって解任には理由が必要ないとしました。   バージニア計画( The Virginia Plan )の説明については、上院議会のウエブサイトから閲覧することが可能...

With prejudice とWithout prejudice?

  アメリカの司法省が検事に対し、ニューヨーク市長であるエリック・アダムスの収賄事件の起訴を取り下げるように指示をしたというニュースが報道されていましたが、法律家として気になったのは、「 without prejudice 」で取り下げることを指示しているという部分です。 刑事裁判のみならず、民事裁判であっても、訴訟の取り下げが行われる場合、重要なのは、「 with prejudice 」で取り下げられるのか、「 without prejudice 」で取り下げられるのかという部分です。「 with prejudice 」で取り下げられる場合、実体法的な効果を伴って取下げが行われることになり、再度訴訟を提起することが困難になります。これに対して、「 without prejudice 」で取り下げられる場合には、実体法的な効果を伴うことなく取下げが行われることになり、再度訴訟を提起することが可能になります。 そこで、今回、司法省がニューヨーク市長の刑事事件の取り下げを求めた理由は、証拠不十分とかではなく、市長の不法移民対策に向けた活動の妨げにならないようにするためとされており、さらに「 without prejudice 」なので、司法省の気が向けばいつでも、蒸し返しの起訴が可能となります。 これらの事実を前提に、連邦政府が求める方針に従って不法移民対策を取らなければ、司法省はいつでも収賄事件を蒸し返して起訴しますということを示唆して圧力をかけているのではないかという専門家もいます。 ちょっとした法律用語が分かると、ニュースの奥が見えてきます。

アメリカの奴隷廃止後の国内産業保護措置だった?

  アメリカでは、 1930 年関税法( Tariff Act of 1930 ) 307 条( 19 U.S. Code § 1307 )で囚人による労働、強制労働によって採掘、製造、生産された物品がアメリカの港に入港することを禁じています。 「うわー、アメリカは、こんなに早い時期から人権保護の意識があったのですね」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは、誤解かもしれません。実は、このような規定が置かれたのは、労働者の人権を保護するという観点からではありませんでした。 当時南北戦争が終わって、やっと正式に奴隷解放が行われるようになると、次のような問題が認識されるようになりました。依然奴隷的なシステムを認めている国の安い労働力を使って製造、生産された物がアメリカに輸入されると、アメリカ国内の生産者の競争力がなくなるとの懸念です。その対抗策が、強制労働によって製造や生産された物品の輸入禁止という措置でした。 この条項が再び脚光を浴びたのは、中国の新疆ウイグル自治区で行われている強制労働が問題になった際です。中国の強制労働によって製造された製品のアメリカへの輸入禁止を強化するため、バイデン大統領の署名により「 Uyghur Forced Labor Prevention Act (ウイグル強制労働防止法)」が成立しました。この法律は、上記で説明した 19 U.S. Code § 1307 で禁止されている物品のアメリカへの輸入を防止を強化するためのものです。 確かに、ウイグル強制労働防止法は中国での強制労働を阻止する目的であると言われていますが、実際には、 1930 年関税法の 307 条が制定された当初の趣旨からぶれていないような気がします。 Congressional Research Service が 1 月 31 日付で出したレポートには、中国系企業による「 de minimis 」免除の不当利用を阻止する方法の一つとして、ウイグル強制労働防止法の執行の強化と記載されている点も興味深いです。

アメリカの外国腐敗行為防止法の執行を停止する?

 2 月 10 日、トランプ大統領が、 Foreign Corrupt Practices Act of 1977 (外国腐敗行為防止法、略して「 FCPA 」)の執行を停止する旨の大統領令を出したことで、こんな法律があったのかと思われた方もいらっしゃるかと思います。時がたつにつれて、日本でも問題となったロッキード事件がこの法律制定のきっかけの一つになっていることも忘れ去られているかもしれません。 外国腐敗行為防止法に基づいて、丸紅などの日本企業も、何度も罰金の支払いを命じられており、アメリカを含む海外でビジネスを営む日本企業の間では要注意の法律とされてきました。 この法律は、アメリカ国外で、その会社の現地社員が、外国の公務員に対し、賄賂を贈った場合等も含まれる点が特徴です。例えば、公務員への賄賂が横行している国でビジネスを始めようと考えて、賄賂なしではビジネスに入り込むのが非常に困難と考えて現地社員が公務員に金銭を渡すなどの行為も違反の対象になりえますし、そのような国の企業をアメリカ企業が買収した後に、子会社での賄賂供与が引き続き行われていた場合も対象になりえ、買収のリスクとしてデューデリジェンスでの注意点とされてきました。 外国腐敗行為防止法に対しては、域外適用で管轄を問題視する意見もありましたし、アメリカ国外、特に法整備やその執行が進んでいないために賄賂等が横行している国でビジネスを行おうとしている企業の中には、アメリカでビジネスを行う企業の足かせになっていると批判している人もいました。 ですから、ビジネスを重視するトランプ大統領が、このような大統領令を出したこと自体は驚くことではありません。 問題なのは、議会が制定した法律を、大統領がビジネスに合わないからといって、執行停止してしまうことが、どこまで法的に許されるのかという点です。ただ、この執行停止に反対して訴訟を提起できる当事者適格のある者がいるのかも疑問が残ります。

二つの予算局の違いは?― 行政管理予算局(OMB)と議会予算局(CBO)

 Office of Management and Budget (行政管理予算局、略して OMB )の他に、 Congressional Budget Office (議会予算局、略して CBO )があります。両方とも日本語に訳すと最後が予算局になっているので、これらの予算局の違いは何なのかと疑問に思うかもしれません。 この行政管理予算局( OMB )は、 1921 年に設立され、 1939 年に Executive Office of the President of the United States (アメリカ 大統領府 、略して EOP )の中に移されました。つまり、行政府、大統領府の中にある組織となります。これに対して、議会予算局( CBO )は、 Congressional Budget and Impoundment Control Act of 1974 ( 1974 年議会予算・執行留保規制法、略して ICA )によって設立された立法府の中にある組織で、 OMB より歴史の浅い組織です。行政管理予算局( OMB )は大統領府の中にあるので、特に大統領の意向に影響される政治色が強い組織と言えるでしょう。行政管理予算局( OMB )のアカウンタビリティーの懸念から、そのディレクターと副ディレクターは、上院の承認が必要なポジションとなっています。 大統領は、 2 月の最初の月曜日までに、議会に行政府が必要と考える詳細な予算案を提出することになっていますが( 31 U.S. Code § 1105 )、行政管理予算局( OMB )の重要な機能の一つに、この予算案の作成があります。ただ、この予算案は行政府の希望に過ぎず、議会がこれに拘束されるわけではありませんが、法律で定められている詳細な情報の記載が求められますし、大統領が所属する政党が議会の多数派である場合は、その要求が実際に予算として認められることが多いので、重要です。それ以外にも、各連邦省庁の予算や連邦職員の雇用に関して重要な役割を担っています。 これに対して、議会予算局( CBO )は、議会の中にある予算局なので、立法府の中にあります。以前、大統領が議会で承認された予算の拠出を拒めるかについてお話ししましたが、リチャード・ニクソン大統領が予算で定められた資金の拠出を拒んだことが...

大統領が議会で承認された予算の拠出を拒めるか?

  行政府のトップである大統領が立法府である議会が承認した予算の使用を拒むことを「 Impoundment 」と呼びます。最近、連邦政府のファンディングを凍結するという大統領令がだされ、議会が予算を配分した資金の拠出を拒むことが可能なのかが問題になりました。議会が分配の決議をした予算の拠出を拒んだのは、トランプ大統領が最初というわけではないのです。 歴史をさかのぼると、リチャード・ニクソン大統領が、連邦水質汚染防止法改正案( 1972 年)の下で連邦政府の財政支援を求める州に対して、議会が配分したすべての資金を支出する義務はないと主張したことがあります。これは、分配金を受領するはずだったニューヨーク等が環境保護庁を訴えたことで、 Train v. City of New York , 420 U.S. 35 (1975) 最高裁判決が下され、行政府は議会で定めた額を拠出する義務があると判断されました。 その後、 Congressional Budget and Impoundment Control Act of 1974 ( 1974 年議会予算・執行留保規制法、略して ICA )が制定され、大統領が議会で可決された予算承認の執行を留保する場合に関する手続きが規定されました。更に、議会の中に、 Congressional Budget Office (議会予算局)が設立されました。 簡単に説明すると、実際に、大統領が予算の執行を留保すべきと考えた場合、大統領は、留保する額、事情、目的、留保した場合の影響等を両院に送り、それに基づいて、両院が 45 日以内に Recission bill (廃止法案)を可決しなければ、予算の執行を留保することができません。 その後、連邦地裁で State of Maine v. Goldschmidt という判決が出され、ジミー・カーター大統領が連邦政府のハイウェイの補助金を遅らせたことが ICA に反すると判断されました。 トランプ大統領による今回の大統領令に対しては、数多くの訴訟提起が予想され、既に提起されているものもあります。 Train v. City of New York が出された頃とは、最高裁判所の判事の構成もかなり違いますし、現在の最高裁判事の構成になった後、以前の最高裁判決が多く覆され...

ICC(国際刑事裁判所)の将来は?

  先日、上院のフィリバスター( filibuster )によって、国際刑事裁判所に制裁を課す法律が上院で可決されませんでしたという投稿をしたばかりですが、懸念していたとおり、国際刑事裁判所に制裁を課す大統領令がだされました。 https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/02/imposing-sanctions-on-the-international-criminal-court/ 大統領令では、その根拠として、 国際緊急経済権限法 ( International Emergency Economic Powers Act 、略して「 IEEPA 」)と 国家緊急事態法 ( National Emergencies Act 、略して「 NEA 」) Immigration and Nationality Act of 1952 ( 1952 年移民国籍法)を上げており、緊急事態が宣言されています。 司法修習を通じて何人もの裁判官の友人がいる私としては、赤根智子裁判官が裁判所所長である国際刑事裁判所にこのような制裁を課すことについて、日本政府が外交的手段を通じて交渉してくれることを願っています。

バイデン時代から始まっていた関税の抜け道をふさぐ努力 - De minimis exemption

  アメリカで、 SHEIN とか Temu と言ったオンラインショッピングのサイトが、その安さを武器としてアメリカ国内での売り上げを伸ばすにつれて、実は、これらのビジネスの安さの秘訣の一つは、一般に「 de minimis 」免除と言われる 1 日一人 800 ドル以下の荷物の輸入に関して免税するというアメリカの規定( 19 U.S.C. § 1321 )を利用して、中国から直接アメリカの個々の消費者に発送するビジネスモデルということが知られるようになりました。すると、アマゾンまで同じ免税を利用して独自の Amazon haul というアウトレットオンラインショップを立ち上げて、ニュースになっていました。 この関税の抜け穴をふさぐ必要があるという認識が広がり、バイデン政権は、 2024 年 9 月に、この免税規定が適用される範囲を厳格にするため規則の改正を求めていました。それに答えて、 U.S. Customs and Border Protection (米国税関および国境警備局)の「 de minimis 」免除に関する規則改正案が今年 1 月に発表され、 3 月 24 日までの期限でパブリックコメントが求められています。 そんな中、トランプ大統領は、国際緊急経済権限法( IEEPA )と国家緊急事態法( NEA )を根拠として、中国に対してさらに 10% の関税を課すと宣言しました。その中で、中国からの輸入に対しては、この問題となっている「 de minimis 」免除を対象外とするとの命令を出しました。 SHEIN 、 Temu は、これに対してどのような対策を取るのでしょうか。中国から輸入する場合は「 de minimis 」免除が使えないので、単に近隣の国に移動するのでしょうか。それを防止するため、議会での立法案の検討も始まっています。 興味深いのは、最初に「 de minimis 」免除が始まった理由です。 1900 年代初めの頃まで、関税は国家の貴重な収入源であったために、支払われる関税は、関税を徴収するためのコストよりも高くなければならないとの認識があったのです。ただ、現在においてはテクノロジーの発達により、関税が少額であっても、コストを抑えられるようになったかもしれませんし、関税率が高くなれば、コストが関税収入の範囲内...

フィリバスターが救った?ICC(国際刑事裁判所)

  国際刑事裁判所は、オランダのハーグに本部を置いており、現在の裁判所所長は日本人である赤根智子裁判官です。 Wikipedia によると、「国際刑事裁判所( ICC )は 1998 年 7 月 17 日に、国際連合全権外交使節会議において採択された国際刑事裁判所ローマ規程(ローマ規程または、 ICC 規程)に基づき 2002 年 7 月 1 日、オランダのハーグに設置された国際裁判所で、国際関心事である重大な犯罪について責任ある「個人」を訴追・処罰することで、将来において同様の犯罪が繰り返されることを防止することを目的としている。」とのことです。この重要な役割を果たす国際刑事裁判所が、アメリカの制裁法案の提出によって揺れています。 国際刑事裁判所は、パレスチナ・イスラエル戦争に関してイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相やその他の幹部に対して逮捕状を出しました。これに憤慨したのが、多くのユダヤ教徒がビジネスや政界で要職についているアメリカです。 その結果、下院に国際刑事裁判所に対して制裁を課す法案が提出、可決されました。 法案の一部には、国際刑事裁判所が「保護される人」の調査や逮捕等を試みた場合に、大統領が、それに加担した外国人に対して取引禁止やビザの取消しや発給停止等様々な制裁を課すことができるという条項が含まれています。 実際にこの法案が発効すれば、国際刑事裁判所存続の危機とも言えたかと思います。ただ、アメリカ議会では下院だけの可決では法律となりません。上院での可決も必要となりますが、上院では、予算に関するものや、最高裁判所判事や行政要職の承認手続き等を除いて、フィリバスター( filibuster )があります。 フィリバスターとは、簡単に説明すると、上院議員の 60 人が賛成しない限り、法案に関する討論を停止することが出来ず、法案の投票をすることが出来ないというものです。そこで、端的に言ってしまうと、 60 票の賛成票がないと、法案が可決されないことになります。 下院で可決された国際刑事裁判所に対して制裁を課す法案は、上院でも審議されましたが、賛成 54 票、反対 46 票によって、 60 票に達しませんでした。つまり、フィリバスターによって上院での法案可決の見通しが立たなくなりました。 フィリバスターによって、現時点...

立法の形式はBillだけではない?

  「議会が緊急事態宣言を解除できるのか?」という説明の中で、「 Joint resolution 」(両院合同決議)についてお話ししましたので、立法の様々な形式について補足説明をします。 議会で決議される立法には、一般的に知られている「 bill 」(法案)以外にも「 resolution 」(決議)があります。日本語に、正確に対応する言葉がないので、英語を残したまま説明します。 この「 resolution 」には、 3 つの種類があります。「 Joint resolution 」(両院合同決議)、「 Concurrent resolution 」(両院共同決議)と「 Simple resolution 」(議院決議)です。 「 bill 」(法案)は、議会の下院と上院で別々に同じ内容が可決され、大統領によって署名された場合に法律となります。「 bill 」(法案)の場合、下院での法案は、「 H.R. 」で始まり、その後に通し番号が入ります。上院の法案は、「 S 」で始まり、その後に通し番号が始まります。 「 Joint resolution 」(両院合同決議)も議会の下院と上院で別々に同じ内容が可決され、大統領によって署名された場合に法的拘束力を有しますが、「 bill 」(法案)とは、目的が異なります。「 Joint resolution 」(両院合同決議)が使われる典型的な例は、ここでは詳細の説明を割愛しますが、「 continuing resolution 」です。一般に「 CR 」と呼ばれ、通常の歳出法案( appropriation bill )が会計年度の最初に成立しない場合に、資金提供を行うために使用されます。それ以外には、前の記事で説明した議会が緊急事態宣言を解除する場合や、合衆国憲法を改正する場合等があります。「 Joint resolution 」(両院合同決議)の場合、下院に提出されたものは、「 H.J.Res 」で始まり、その後に通し番号が入ります。上院に提出されたものは「 S.J.Res 」で始まります。 「 Concurrent resolution 」(両院共同決議)は、下院と上院で可決されるものですが、大統領による署名を必要とせず、法的拘束力を有しませんが、しばしば影響力があります。政策に対する支持や...