またしても伝家の宝刀?
以前の投稿で、関税は一種の税金を課すことになるので、憲法上、関税を課す権限は議会にあるけれども、議会が法律を制定して、その範囲内で大統領に関税を課す権限を与えることは可能であるというお話をしました。
ただ、アメリカには、1977年国際緊急経済権限法(50
U.S.C. 1701-1707)と国家緊急事態法(50 U.S.C. 1601-1651)など、大統領が緊急事態宣言を出すことを許す法律がいくつかあります。2025年4月2日、トランプ大統領は、これらの法律を根拠に緊急事態を宣言して、それを根拠として関税を課す大統領令に署名しました。いわば、伝家の宝刀ともいえる措置です。
これらの法律には、議会が緊急事態宣言を解除する手続規定もあります。上院がカナダに対する緊急事態宣言を解除するとの「Joint
resolution」(両院合同決議)を可決したのと同じような措置を取る可能性はありますが、下院が同様の措置を取る可能性はほとんどなく、また、大統領が拒否権を行使すると両院の3分の2以上の多数で再度可決することが必要になり、事実上、現時点で、議会によって緊急事態宣言を解除することは不可能に近いです。
緊急事態宣言によって、大統領が個人で関税を課すのは、税金を課す権限は議会にあると定める憲法Article
1 Section 8 Clause 1に違反すると主張する議員もいますので、何らかの訴訟が提起される可能性もあります。ただ、アメリカの大手事務所に課した大統領令以降、大手事務所がこのような訴訟を受任する危険性が認識されるようになりました。
「Joint
resolution」(両院合同決議)の説明については、立法の形式はBillだけではない? をご覧ください。
緊急事態宣言を理由とする関税 も参考になります。