教育省を解体する発想はどこから来るのか?
3月20日にトランプ大統領がアメリカ連邦行政機関の一つである教育省を解体する旨の大統領令に署名したというニュースは、日本人の感覚では理解しがたいことかもしれません。しかし、教育省を解体すると言い出したのは、トランプ大統領が最初ではありません。レーガン大統領も教育省の解体を主張していたり、共和党内の保守派は、以前から教育省の解体を望んいました。
なぜ、このような解体論が出てくるのかを理解するには、アメリカ合衆国憲法のCommerce
clauseを理解することが必要になるかもしれません。合衆国憲法第1編第8節3項には、外国との通商、州間での通商、州間にまたがる人と物資の交流にかかわる諸問題は、連邦議会が規制する権限がある旨規定しています。例えば、州間をまたがる電車や飛行機での移動に関しては連邦法で規制しますが、特定の州内で完結する行動などは、連邦法ではなく州法で規制することになります。つまり、連邦法ですべてについて規制できるわけではありません。このCommerce
clauseで連邦議会が規制できる範囲は、以前はかなり限定的に解釈されていましたが、20世紀の後半になると、連邦議会が規制できる範囲が広く解釈されるようになりました。
ただ、1995年に、連邦議会の法律によって制定できる法律の範囲外であると最高裁判所によって判断されたケースもあります(United
States v. Lopez)。ここでは詳しく説明しませんが、許可されていない個人が、スクールゾーンで、弾が装填された又は安全が確保されていない銃器を故意に所持することを禁止した連邦法がCommerce
clauseによって連邦議会に与えられた権限を逸脱していると判断されました。
つまり、連邦議会は、Commerce
clauseによって与えられた権限内の事項についてしか法律で規定することができないのです。
このCommerce
clauseの考え方は、教育については、州が決めることであって、連邦政府の関与は最小限にすべきという方向に働きます。
Commerce clauseとともに議論されるの憲法の規定が、合衆国憲法第1編第8節18項のNecessary
and Proper Clauseで、連邦議会の立法権は、単に絶対的に必要な措置だけでなく、達成されるべき目標に役立ち、かつ、最も有効に実効を生じさせると思われるあらゆる適切な措置を講ずることができるとされています。つまり、Commerce
clauseは、Necessary
and Proper Clauseは、時として反対方向に働くことがあるので問題は複雑となります。
補足として、Brown
v. Board of Educationという公立学校を黒人と白人で分離するのは憲法に違反すると判断した最高裁判例が1954年に判断された後も、南部の州では学校の分離が解消されずに、1970年代まで、分離が続いたことや、2020年以降、Critical
race theory (批判的人種理論 (CRT))を学校で教えるべきではないと共和党の候補者が主張しており、一般的に共和党が強い州で、CRTを学校で教えることを禁止した州法が制定されたことなどを知っておくと、この問題の理解を深めるのに役立つかもしれません。