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3月, 2025の投稿を表示しています

現在のアメリカの連邦政府の歳出は?

  アメリカでは、イーロン・マスクが率いる政府効率化省( DOGE )が、多数の連邦職員を解雇したり、連邦政府の省庁を解体するなどしていますが、現在の連邦政府の歳出額や割合はどうなっているのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。 議会予算局( CBO )が、 2024 年に歳入と歳出を開示しているのでご紹介しましょう。 2024 年の連邦政府の歳入総額は約 4 兆 9180 億ドルで、歳出総額は 約 6 兆 8260 億ドルです。歳出が歳入よりかなり超過しているということです。歳出の中身ですが、 mandatory spending (義務的支出)と言われる歳出が約 4 兆 1300 億ドルです(歳出の約 60 %)。 mandatory spending (義務的支出)のほとんどは、アメリカの年金制度である Social Security 、高齢者健康保険である Medicare 、低所得者健康保険である Medicaid が占めていますが、その他の政府の一般的なサービスなどに関する歳出も約 1 兆 0060 億ドルと 4 分の 1 近くを占めています。 Social Security は、約 1 兆 4540 億ドル、 Medicare や Medicaid などの健康保険関係の歳出が約 1 兆 6690 億ドルで、合計すると、約 3 兆 1230 億ドル(歳出の約 45.7 %)となります。それ以外の歳出は discretionary spending と net interest です。 discretionary spending には、国防費と国防費以外がありますが、国防費が約 8550 億ドル(歳出の約 12.5 %)、国防費以外が約 9600 億ドル(歳出の約 14 %)、 net interest が約 8810 ドル(歳出の約 12.9 %)です。つまり、国防費よりも、国債などの利息支払い額の方が多いということです。 歳出総額約 6 兆 8260 億ドルのうち、歳出を抑えても影響が少なさそうなものは、国防費でない discretionary spending でしょうが、約 9600 億ドルで、全体の支出からすると約 14 %に過ぎないです。政府効率化省を率いるイーロン・マスクが 2 兆ドル歳出を減らすと言っていたようです...

さらなる大手法律事務所に対して大統領令が

  「アメリカの大手法律事務所に激震が」という投稿をしましたが、さらに 3 月 25 日に、 Jenner & Block LLP という Wikipedia によると 434 人弁護士が所属する事務所と 3 月 27 日に Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr LLP という 1000 人以上弁護士が所属事務所に対して、大統領令が出されました。内容としては、 1,000 人以上の弁護士が所属する Perkins Coie LLP 法律事務所と 1,000 人以上の弁護士が所属する Paul, Weiss, Rifkind, Wharton & Garrison LLP 法律事務所に対して出された大統領令と似たような内容です。 これらの法律事務所で働く者の security clearances の手続きを停止するとか、連邦政府がこれらの法律事務所に対して、仕事を出さないとか、一定の連邦政府省庁に入ることを禁止するなどの内容です。アメリカには、大手事務所には必ずと言ってよいほど Government contract というプラクティスグループがあって、政府調達や政府のグラントに関する契約交渉などを行っていますが、大統領令によって、このような制限が課されると、このプラクティスを行うことがほぼ不可能になるといわれています。そこで大統領令が出される前に、先回りして大統領と交渉をしている事務所があるとの報道もあります。 これに関して、訴訟を提起する法律事務所はあるのでしょうか。それとも、 Paul Waiss のように、大統領と交渉をして妥協するのでしょうか。

大統領就任後すぐに関税を課せる根拠は?

 1962 年通商拡大法 232 条による関税を課すためには、法定の手続きに従って、利害関係者または省庁からの要請などに基づき、商務長官が特定の物の輸入が国家安全保障に与える影響について調査を開始し、推奨事項を含む調査結果報告書を大統領に提出しなければなりません。大統領はその後に関税等の措置を判断することになります。 1974 年通商法 201 条による関税を課すためには、法定の手続きに従って、国際貿易委員会( ITC )がが特定品に関し国内産業に対して損害を与えるかどうかを調査する推奨事項を含む調査報告を大統領に提出しなければなりません。大統領はその後に関税等の措置を判断することになります。   2025 年 3 月 26 日に署名された大統領令は、 1962 年通商拡大法 232 条に基づいてアメリカ国外から輸入される自動車に対して 25 %の関税を課すとしていますが、商務長官の調査はどうなったのかと疑問に思われるかもしれません。この大統領令は、最初のトランプ政権の時に行われた調査報告を引用して、それに基づいて関税を課しています。 同じように、 2025 年 2 月 11 日に署名された大統領令も、 1962 年通商拡大法 232 条に基づいてアルミニウムに対する関税を修正してカナダ、メキシコ、 EU 等からの輸入に対しても 25% の関税をかけましたが、これも、最初のトランプ政権の時に行われた複数の調査報告を引用しています。 つまり、最初のトランプ政権の時に行われた調査をもとに関税を課すことによって、調査にかかる時間を大幅に短縮しています。これが、関税をかけるまでにかなり時間がかかった最初のトランプ政権とは違う点と言えるでしょう。

最高裁のメディアに関する意外な判断

  日本でメディア側で名誉棄損訴訟に関わっていた弁護士としては、 1964 年にアメリカの最高裁判所で判断された New York Times Co. v. Sullivan (ニューヨークタイムス対サリバン判決)という、報道の自由に大きな影響を与えた判例を読んだ際には、日本の法律との違いに衝撃を覚えました。ニューヨークタイムス対サリバン判決は、分かりやすく簡単に説明してしまうと、公人等に対する報道等の場合は、名誉棄損訴訟を提起した原告側が被告側に「 actual malice (アクチュアル・マリス、無理に訳すと、実際の悪意)」があったことを立証しなければならないと述べています。これに対して、日本で名誉棄損訴訟を提起する場合、原告ではなく、訴えられた被告側が、報道時に、報道した内容が真実であると信じるに足りる合理的な理由があったことを立証しなければなりません。 つまり、日本で名誉棄損訴訟を提起する原告は、報道内容が真実ではなかったことを立証すれば足りるのですが(後は被告の反論と立証に委ねられる)、アメリカで名誉棄損訴訟を提起する原告は、原告が公人等である場合は、報道内容が真実ではなかったことを立証するだけでは足りずに、アクチュアル・マリスがあったにも関わらず報道したということを立証する必要があるので、公人側が名誉棄損訴訟で勝利するのは日本と比較して難しいのです。 トランプ大統領の熱心なサポーターである Steve Wynn 氏が、最高裁に対して、このニューヨークタイムス対サリバン判決を再考することを最高裁判所に求めた際には、過去の古い最高裁判決を複数覆している今の最高裁判所が、約 60 年前の判断であるニューヨークタイムス対サリバン判決を覆すのではないかとも言われていました。しかし、意外なことに、最高裁判所は、たった一言「 Petition for writ of certiorari to the Supreme Court of Nevada denied. 」と判断して、最高裁判所での判断をしないと決定しました。これによって、ニューヨークタイムス対サリバン判決は、しばらくのあいだ覆されないことになりました。 この判断が、複数のメディアを訴えているトランプ大統領の行動に影響を与えるのかは不明ですが。

全米に影響を及ぼす連邦地方裁判所の差止命令は妥当か?

  特に第 2 次トランプ政権になってから、一地方の連邦地方裁判所が、トランプ政権の活動に対して、全米に影響を及ぼす差止命令を出したというニュースを頻繁に聞くようになって、全国的な差止命令の妥当性について議論がなされています。 2025 年 3 月 20 日、 Congressional Research Service が第 1 次トランプ政権とバイデン政権下での全国的な差止命令に関してレポートを出しており、このような問題意識があることや、この問題を立法によって解決しようという動きがあることをご紹介します。このレポートの中で、「 Nationwide Injunction (全国的差止命令)」という言葉が使われていますが、このような法律用語があるわけではないと注意書きされています。 差止命令には、「 Temporary restraining order 」「 Preliminary injunction 」「 Permanent injunction 」と三種類があり、 Temporary restraining order は、最初の一時的な差止命令で、訴訟によって最終的な判断が下されるまでの間の差止命令である暫定的な差止命令の Preliminary injunction を出すかどうかを判断するまでの本当に短い期間だけ出される差止命令で、 Permanent injunction は、裁判所による本案判決に基づいて行われる最終的な差止命令ですが、上訴することは可能です。 2019 年 5 月の演説で、当時のウィリアム・バー司法長官は、連邦裁判所が「 20 世紀全体で全国的に差し止め命令を出したのはわずか 27 件だけだ」と述べたそうです。しかし、このレポートによると、全国的な差止命令は、ジョージ・ W ・ブッシュ政権下で 6 件、オバマ政権下で 12 件、第 1 次トランプ政権下で 64 件、バイデン政権の最初の 3 年間で 14 件出されたとのことです。 第 1 次トランプ政権下で最も数多く全国的な差止命令を出したのはカリフォルニア州の連邦裁判所で( 23 件)、バイデン政権下で最も数多く全国的な差止命令を出したのはテキサス州の連邦裁判所( 10 件)だそうです。カリフォルニア州といえば、民主党が強い州で、テキサス州といえば、共和党が...

アメリカの大手法律事務所に激震が(Addressing Risks from Paul Waiss )

  トランプ大統領は、 3 月 6 日、「 Addressing Risks from Perkins Coie LLP 」という 1,000 人以上の弁護士が所属する Perkins Coie LLP 法律事務所をターゲットにした大統領令を発令し、 3 月 14 日に、さらに「 Addressing Risks from Paul Waiss 」という 1,000 人以上の弁護士が所属する Paul, Weiss, Rifkind, Wharton & Garrison LLP 法律事務所(以下「 Paul Waiss 」)をターゲットにした大統領令を発令しました。その後、 3 月 21 日に、 Paul Waiss がトランプ大統領と交渉をし、その意向を受け入れる形の交渉をしたことによってこの大統領令を取り下げてもらったというニュースが報道され、アメリカの法曹界には激震が走っています。主に法曹関係のニュースを扱い、多くの弁護士が閲覧している「 Above the law 」では、これらに関するニュースが多く掲載されています。 3 月 6 日の Perkins Coie LLP 法律事務所をターゲットとした大統領令の主な内容は、この事務所がヒラリー・クリントンを代理したことなどを理由として挙げて、この事務所で働く者の security clearances の手続きを停止するなどの制裁措置が記載されています。 同じように、 3 月 14 日の大統領令の主な内容は、この事務所の弁護士であったマーク・ポメランツが、トランプ氏を訴追する目的のために、事務所を辞めてマンハッタン地方検察局で働き始めたことなどを理由に挙げて、 Paul Waiss で働く者の security clearances の手続きを停止するなどの制裁措置が記載されています。 1,000 人以上の弁護士が所属する法律事務所が、 security clearances がなければ働くことのできない仕事をすべて受任することができなくなるというのは、かなりの痛手になります。 Above the law の他の記事によると、スティーブ・バノンが、トランプ大統領はこの法律事務所を破産させるつもりではないかと言っているそうです。 Bannon Drops Bombshell: Tru...

緊急事態宣言を理由とする関税

以前の投稿で、関税を課す権限は議会にあるが、議会が法律を制定して、その範囲内で大統領に関税を課す権限を与えることは可能であるというお話をしました。その法的根拠の中で、トランプ大統領による大統領令の最初の部分に頻繁に引用されている奥の手とも入れる法律があります。それが、 1977 年国際緊急経済権限法( 50 U.S.C. 1701-1707 )と国家緊急事態法( 50 U.S.C. 1601-1651 )です。 1977 年国際緊急経済権限法は、国家緊急事態法によって緊急事態が宣言された場合に大統領がアメリカ国外を起源とする経済事項に対して行える行動を広く規定しています( 50 U.S.C. 1702 )。関税を課すことができると明確には記載されていませんが、現政権は、この大統領の権限に基づいて関税を課すことができると解釈しているようです。 ケビン・ハセット氏( Kevin Hassett )が CNBC で 3 月の最初の週に関税によって国が得た収入が 10 年蓄積すれば、減税による減収を補えると話していたのを聞いて、違和感を覚えました。つまり、関税の根拠を緊急事態としながら、関税による収入が 10 年蓄積すると言っているのと同じと考えられるわけで、緊急事態が 10 年以上続くことを示唆しているように聞こえます。また恒久的な減税の減収を補う財源にするのであれば、緊急事態が永遠に続くということを前提にするのは、かなり不自然な解釈になるのではないでしょうか。前にご説明した 1962 年通商拡大法 232 条、 1974 年通商法 201 条、 301 条は、調査を行ったうえで、調査によって判明した一定の問題を解決するために関税を課すことを可能とする法律です。関税は税金のようなものですが、特定の問題解決のための手段にすぎない点で税金と違うので、問題が続くことを前提として減税による減収を補う手段というのは、若干違和感があります。

関税の物価への影響を判断するのは困難?

  3月19日に連邦準備理事会( Federal Reserve Board ( FRB ))は、理事会にて政策金利の据え置きを決定しました。その後の理事会議長への質問の際には、関税の物価への影響についても質問が出ていました。パウエル議長は、関税の物価に与える影響について、物価が上がった場合に、どの部分が関税による影響なのかを判断するのは非常に困難であると答えていました。その例の一つとして挙げていたのが、洗濯機に対して関税が課された時の事例です。これは、関税の物価に与える影響を説明する際によくあげられるので、ここでご紹介します。 以前、洗濯機に対して関税が課された際に、洗濯機の価格は上昇しました。これは、関税による費用の増加を消費者が負担した結果となります。しかし、不思議なことに通常洗濯機と一緒の販売される乾燥機の値段も上昇しました。それも乾燥機には関税はかけられていないにもかかわらず、上昇したのです。 つまり、関税によるコスト増は、どの部分の価格に影響するか予想するのは難しいということです。

1974年通商法301条による関税

  先日から関税シリーズとして、関税を課す権限は議会にあるけれども、議会が法律を制定してその範囲内で大統領に関税を課す権限を与えている場合について説明しています。 今回は、 1974 年通商法 301 条について簡単に説明します。 1974 年通商法 201 条は、 International Trade Commission (国際貿易委員会( ITC ))が深く関わる条項でしたが、 301 条は、 Office of the United States Trade Representative (アメリカ合衆国通商代表部( USTR ))が主体となって調査判断等を行う条項です。 USTR は、利害関係者の申し立てにより、外国の貿易に関する条約違反や、不公正な商取引などの法律で定める事項に関して調査を開始することができます。ただ USTR の調査に必ずしも利害関係人の申し立てが必要というわけではありません。 USTR は調査によって、米国の貿易協定に基づく権利等が拒否されたかどうか、外国の行為、政策、または慣行が、貿易協定の規定に違反しているか、米国に対する利益が拒絶されているか、米国の取引慣行に対する不合理な負担や制限を課しているかどうかなどを判断します。このような場合に含まれる例として、外国が直接的または間接的に、外国とアメリカ合衆国間の貨物の商業輸送に使用される船舶の建造に対して補助金を提供すること、公平かつ平等な事業設立の機会や、知的財産権の適切かつ効果的な保護の提供を否定する場合や、市場へのアクセスの機会を不当に制限する場合や、恒常的に通常の労働条件を満たしていない場合などがあげられます。 調査の結果によって、 USTR は、大統領の指示がある場合はそれに従って、輸入に関する義務や制限を課すことや、貿易協定から撤退停止すること等が可能です。それには、関税を課すことも含まれます。 1974 年通商法 301 条には、課すことが可能な関税の最大関税率の定めはありません。 本条によって過去に課した輸入に関する義務や制限を、大統領の指示があればその指示のもとに、補正することや停止することが認められます。 この条項に基づいて補正が行われた例として、バイデン大統領によって中国から輸入される電気自動車に 100 %の関税が課されたことが...

1974年通商法201条による関税

  先日から関税シリーズとして、関税を課す権限は議会にあるけれども、議会が法律を制定してその範囲内で大統領に関税を課す権限を与えている場合について説明しています。 今回は、 1974 年通商法 201 条について簡単に説明します。本条に基づいて関税が課されるためには、まず、 International Trade Commission (国際貿易委員会( ITC ))が特定品に関し国内産業に対して損害を与えるかどうかを 201 条に基づいて調査することが必要です。この調査は、 ITC が自らの判断で行うこともできますが、損害を受けている当事者の申立てや、大統領、 USTR ( Office of the United States Trade Representative 、アメリカ合衆国通商代表部)、下院の歳入委員会、または上院財政委員会による要求によって行われます。 ITC は、原則として 180 日以内に国内産業への重大な損害の有無につき結論を出し、報告書を作成します。 ITC が重大な損害がある、またはその恐れがあると判断した場合、大統領に対し推奨する行動を報告書に含めます。その推奨する行動の中に関税を課すことも含まれます。 大統領は、 ITC から重大な損害を肯定する報告書を受領してから 60 日以内に関税を含む適切な行動をとることが求められます。関税率及び関税を課す期間について法定の制限があります。関税を課した後も ITC は、その効果についてモニタリングする必要があり、 3 年を超えた場合は、報告書を作成します。 1974 年通商法 201 条に基づく関税は、 ITC が特定品に関する国内産業への重大な損害またはその恐れがあるか調査することが必要となるので、大統領が特定の国からの全輸入品について、調査なしに一律に関税を課すというようなことは、この法律上認められていません。 例えばソーラーパネルに課された関税は 1974 年通商法 201 条に基づいています。

1962年通商拡大法232条による関税

  前回の投稿で、関税を課す権限は議会にあるが、議会が法律を制定して、その範囲内で大統領に関税を課す権限を与えることは可能であるというお話をしました。その法的根拠を6つほど列挙しましたが、ここでは、まず 1962 年通商拡大法 232 条についてお話したいと思いしたいと思います。最初のトランプ政権では、この法律に基づいてスティールとアルミに関税が課されました。 この法律に基づいて関税を課す場合、この法律で規定される手続きに沿って行われる必要があります。まずは、利害関係者または省庁からの要請などに基づき、商務長官が特定の物の輸入が国家安全保障に与える影響について調査する必要があります。このような要請がない場合でも商務長官は調査を開始することが可能です。この調査をするにあたって、国防長官やその他適切な Officer にアドバイスを求める必要があります。適切であれば、 Hearing などを通じて必要な情報を収集することが求められます。 調査を始めてから270日以内に、調査結果報告書を大統領に提出しなければなりません。この報告書には、商務長官としての推奨事項が含まれます。 その物を一定以上アメリカに輸入することは国家安全保障上問題があるという報告書を受け取った場合、大統領は90日以内に商務長官の意見に同意するまたは、同意しないかを決定する必要があります。大統領が国家安全保障のためにアクションが必要であると判断した場合には、 15 日以内にアクションを起こす必要があります。大統領が商務長官の報告書に基づく決断をしてから30日以内に議会に書面で報告しなければなりません。大統領は、必ずしも商務長官の報告書にある推奨事項に従ったアクションを起こさなければならないわけでありません。法律に決められた手続きに従って、他の手段によるアクションを起こすことも可能です。 1962 年通商拡大法 232 条には、特に関税率や関税を課す期間に関する制限はありません。 ただ、 1962 年通商拡大法 232 条に基づいて関税を課すためには、特定の物の輸入に関して国家安全保障の問題があることが条件になっており、また法律に規定される手続きに従って関税の有無を決定する必要があります。つまり、特定の国からの輸入品について、調査なしにすべて一律に関税をかけるというようなことは、...

関税の根拠となる法律は?

  アメリカ合衆国憲法の Article 1 Section 1 には「 All legislative Powers herein granted shall be vested in a Congress of the United States 」(すべての立法権はアメリカ合衆国議会に付与される)と記載されていて、議会に与えられる権限として Article 1 Section 8 Clause 3 には、「 To regulate commerce with foreign nations 」(外国との商取引を規制すること)、 Article 1 Section 8 Clause 1 には「 Power To lay and collect Taxes 」(税金を課し、招集する権限)と記載されています。 関税は、外国との商取引に関して税金を課すことと考えられるので、憲法上、議会に関税を課す権限が与えられています。ただ、適切な内容とタイミングで関税を課すには様々な考慮事項があるため、議会が法律の制定し、その範囲内で大統領に関税を課す権限を与えることが出来ます。つまり、憲法上、大統領が自由に関税を課すことを認めているわけではなく、法律制定によって、その範囲で関税を課す権限が与えられているのです。 大統領に関税を課す権限を与える法律をリストすると、 1962 年通商拡大法  (Trade Expansion Act of 1962)  232 条、 1974 年通商法  (Trade Act of 1974)   201 条、 301 条、 122 条、 1930 年関税法 (Trade Act of 1930)  338 条、 1977 年国際緊急経済権限法 (International Emergency Economic Powers Act of 1977) です。 この後の投稿で、これらを説明していきたいと思います。