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連邦準備制度―Dual mandateとスタグフレーション

  前回、 Fed (米連邦準備制度)の主要な金融政策手段がフェデラルファンド金利の操作であることについてお話ししました。今回は、それに関連する Dual Mandate (二重の使命)と、近年懸念されているスタグフレーションについてご説明します。 金融政策は、 1977 年に制定された連邦準備制度理事会( Federal Reserve Board, FRB )の法定任務に基づいており、その任務は「雇用の最大化、物価の安定、および長期金利の中程度な水準の維持」を促進することにあり、雇用を最大限にすることと物価の安定は「 Dual mandate (二重の使命)」と呼ばれています。 通常は、景気が悪化して失業率が高くなれば、物価の上昇(インフレ)も落ち着く傾向にあります。このような状況では、金利を下げることによって、景気を刺激し、雇用を改善するという政策が有効です。 ただ、現在、関税や供給制約などの影響により、インフレと景気の停滞が同時に発生するスタグフレーションが起きるのではないかとの懸念が広がっています。同時に、 FRB が金利を決定する際に、この Dual mandate をどのように当てはめればよいのか議論されることが多くなってきた気がします。なぜなら、 Dual mandate の目標を一度に達成しようとすると、両目標がコンフリクト、つまり対立してしまう場合があるからです。例えば、インフレ抑制のために金利を引き上げることは有効とされますが、それにより既に停滞している景気がさらに冷え込み、失業率が上昇する可能性もあります。景気過熱によるインフレであれば金利引き上げは合理的ですが、景気が停滞して失業率が高いにも関わらず、何らかの原因でインフレが引き起こされている場合は、金利を上げることによって景気を冷やすと、さらに失業率が高くなる可能性があるからです。 このように、金利政策によって物価安定と雇用最大化という 2 つの目標達成が時に対立することがあり、 FRB の判断には高度なバランス感覚が求められます。そこで、 FRB の裁量が大き過ぎるのではないか疑問を投げかける人もいます。 また最近では、「 Dual Mandate には無理があるのでは?」という疑問から、物価安定のみを目標とする「 Single Mandate (単一の使命)...

連邦準備制度―Federl Reserve System

  最近、連邦準備制度理事会議長であるジェローム・パウエル氏をトランプ大統領が解任するかもしれないというニュースによって株価が急落し、大統領が解任する予定はないと発言したことで株価が回復したということがありました。今日は、この連邦準備制度について少し説明したいと思います。 連邦準備制度は、 1913 年の連邦準備法( Federal Reserve Act of 1913 )によって、アメリカの中央銀行として設立されました。連邦準備制度は、ワシントン D.C. にある理事会( Board of Governors )の監督のもと、 12 の地域連邦準備銀行で構成されています。理事会は、大統領によって指名され、上院によって承認された 7 人の理事で構成されます。大統領は理事の中から議長と二人の副議長を選出し、上院の承認を得ます。地域連邦準備銀行の総裁は、それぞれの銀行の理事会によって選ばれ、連邦準備制度理事会の承認を得て任命されます。現在の連邦準備制度理事会議長はジェローム・パウエル氏( Jerome Powell )です。理事の任期は再任不可の 14 年間であり、議長および副議長の任期は再任可能な 4 年間です。ジェローム・パウエル氏の議長としての任期は、 2026 年の 5 月 15 日までですが、 14 年である理事の任期は 2028 年 1 月 31 日までなので、議長の任期終了後も理事の任期が続きます。理事は「正当な理由」( for cause )がある場合に限って解任可能で、他の政治任命職に適用される「随意解任」( at will )基準よりも厳しい基準です。 一般に、連邦準備制度の政策は理事会によって策定され、地域連邦準備銀行によって実行されます。ただし、金融政策に関する決定は、連邦公開市場委員会( Federal Open Market Committee 、 FOMC )によって行われます。 FOMC は、 7 人の理事、ニューヨーク連邦準備銀行の総裁、およびその他の地域連邦準備銀行の総裁のうち 4 人で構成されます。この 4 つの議席は、他の 11 の地域銀行の間で交代制となっています。 FOMC は、少なくとも 6 週間ごとに会合を開き、金融政策の方針を見直します。 Fed の主要な金融政策手段は、 federal funds...

関税の悪影響

  連邦準備理事会( Federal Reserve Board ( FRB ))議長のパウエル氏が関税によってインフレが引き起こされるかについて述べており、関税による値上げが一時的なものになる可能性と、その他の事情によってインフレを引き起こす可能性があることを指摘していました。 それを、自分なりにかみ砕いて理解してみました。 まず、関税率が低い場合は、例えば5%以下の場合は、それに伴って一度だけ値段を上げて消費者に転嫁すればよいので、その後、関税による継続的な値上げの必要はなく、値上げは一過性のものになる可能性が高いです。しかし、関税率が高い場合、例えば20%以上の場合、それを一度にすべて消費者に転嫁することによる消費者離れを防ぐ必要があり、少しずつ何度かに分けて値上げをしていくことになります。また、何回かの値上げで関税分をすべて転嫁した場合であっても、当初転嫁できなかった部分の損失を取り戻す必要性から、さらに値上げをする可能性もあります。すると、インフレ傾向がかなり長期にわたって継続することになり、インフレは一過性のものではなくなります。   また、インフレとは別に、関税の悪影響として、 Corruption (汚職)の温床となりやすいということを指摘する人が多くいます。その根拠は、最初のトランプ政権で、アルミニウムとスティールに関税がかけられた際には、 Exclusion という例外措置を申し立てる手続きがありましたが、トランプ大統領が所属する政党である共和党に献金した会社の方が、民主党に献金した会社と比較して、例外措置を認められる確率が圧倒的に高かったと指摘によります。

下院本会議での審議方法 -Suspension of rulesとSpecial Rules

アメリカの下院議院の本会議の審議での手続き(法案補正の方法や議論の時間や配分等)について、「 Suspension of rules 」という方法で審議される場合が結構あります。この Suspension of rules で審議される場合は、討論の時間が合計で 40 分に制限され、本会議での補正が認められません。ただ、 Suspension of rules での審議をすることについては、下院議長しかその申立てをすることが出来ないだけでなく、 3 分の 2 の多数で可決される必要があります。必然的に両党で明確な争い等がない法案の審議での方法となります。 では、 Suspension of rules で審議が出来ないような場合は、どのような手続きで審議するのでしょうか。その法案ごとに下院議院の Special Rules による審議が一般的です。この手続きによる場合、まずは、 Special Rules を定め、それを承認するかについて投票を行い、多数決で可決した後に、その手続きに基づいて本会議の審議を進めることになります。 Special Rules で決定される事項の例としては、法案を審議する際に下院が使用する手続き上の枠組みを特定すること、一般的な討論の時間やその配分について、討論及び対象と対象となる基本法文を定めること、修正手続きの内容を明確にし、既存の規則を調整または免除し、異議申立て( Point of order )が提起されるのを制限すること等が含まれます。 上院では、原則として討論の制限時間が定められておらず、討論終結動議 (cloture) を 5 分の 3 以上( 60 票)の投票で可決しないと法案自体の投票に進むことが出来ませんが、下院では、討論の制限時間が決められます。通常、関連する委員会の議長(多数党)と Ranking member (少数党)が決められた時間を各党で管理します。 既存の規則の調整または免除についてですが、例えば、下院の規則では本会議での審議の 72 時間前までに委員会のレポートがアクセス可能になることが要求されていますが、 Special rule でそれを免除することも可能です。 討議の対象となる基本法文についてですが、最初に法案が下院に Introduce された後に、委員会で補正されている...

アメリカで法律はどうやって成立するのか?

  アメリカでは法律はどうやって成立するのかというのを非常に簡単に説明すると、上院と下院で、同じ内容の法案を可決して大統領が署名することで法律が成立するのですが、ここでは、もう少し詳しく一般的な手続きの流れを説明させていただきたいと思います。 まず、法律制定手続きが開始されるためには、下院でも上院でも、法案が議員によって各院に introduce ( 提案 ) される必要があります。共和党の議員と民主党の議員が co-sponsor となって、法案を introduce し、超党派の法案であることを強調することも多いです。 Introduce した議員の名前が法律の名前として呼ばれることもあります。例えば、日本でも日本版バイドール法と言われる Bayh-Dole 法は、民主党の Birch Bayh 議員と、共和党の Bob Dole 議員が co-sponsor となって提案された法律で、両議院の苗字をとって、 Bayh-Dole 法と言われています。 一般的に、法案が introduce されると、下院では Speaker (議長)が、その法案の内容を管轄する委員会( committee )に付託( refer )します。各委員会の議長( chair )は多数党所属議員で、 Ranking member は少数党所属議員となります。この委員会の Chair は、何を審議するか、また審議の優先順位を決める権限があります。 introduce された法案をそのまま放置することも可能です。上院でも同じように委員会( committee )に付託( refer )されることが一般的ですが、一定の条件のもと直接上院のカレンダーに予定を入ることも可能です。 委員会が当該法案を取り上げると決定した場合は、公聴会( Hearing )が開かれることが一般的です。当該事項に関する専門家やその法案によって影響を受ける利害関係者等に質問をすることになります。 次は、公聴会によって得た情報をもとに、法案に修正を加えることになります。委員会が、公聴会と法案修正を小委員会に任せることも一般的に行われます。 その後に、下院では、委員会が下院に報告をして、下院のカレンダーに予定を入れます。カレンダーに予定が入ったからといって、下院でその法案が審議されるとは限りません...

巨大法律事務所を半国有化したに近い??

トランプ政権が、いくつかの巨大法律事務所をターゲットに大統領令を出したり、目を付けられた法律事務所が大統領令を見据えて交渉したりと、アメリカの巨大法律事務所の形が変わり始めていることを以前の投稿で説明しました。 アメリカの CNBC というテレビ局で、 Kirkland & Ellis ( 所属弁護士 3500 人以上 ), Allen Overy Shearman Sterling ( 所属弁護士約 4000 人 ), Simpson Thacher & Bartlett ( 所属弁護士約 1500 人 ), Latham & Watkins ( 所属弁護士約 3000 人 ), Cadwalader, Wickersham & Taft ( 所属弁護士約 400 人 ) と和解が成立し、 DEI (多様性・公平性・包括性)プログラムを廃止することと政権のためにプロボノ活動(無償サービス)を提供することを約束し、その無償サービスの総額は 5 億ドルを超えるということが報道されていました。 政権のためにプロボノ活動をすることによって、どのような影響が及ぶか、自分なりに考えてみます。まずは、 Conflict of interest (利害相反)の問題が発生するために、弁護士倫理の問題から考えても政権を相手方とする仕事を引き受けるのが難しくなるということがあげられます。今回ターゲットにならなかった法律事務所も、今後トランプ政権のターゲットにならないように、受任する事件を選択するよう萎縮する可能性もあります。 また、今まで、連邦政府から仕事を請け負っていた事務所が、 5 億ドル分の仕事を失う可能性があるでしょう。ターゲットにならなかった事務所であっても、連邦政府の仕事を有償で請け負っていた事務所は仕事量が減る可能性があるので、安心してはいられないでしょう。この観点からいうと、連邦政府が巨大事務所に無償で仕事を請け負わせることで一部国有化したに近いような状態が発生します。 CNBC でもそのようなニュアンスの感想を述べていました。 さらには、巨大法律事務所がプロボノで働いた時間をどこかで埋め合わせる必要が生じることによって、既存のクライアントがその分の負担を負わされる可能性ががあります。つまり、通常のクライアントに対して、ア...

教育省を解体する発想はどこから来るのか?

 3 月 20 日にトランプ大統領がアメリカ連邦行政機関の一つである教育省を解体する旨の大統領令に署名したというニュースは、日本人の感覚では理解しがたいことかもしれません。しかし、教育省を解体すると言い出したのは、トランプ大統領が最初ではありません。レーガン大統領も教育省の解体を主張していたり、共和党内の保守派は、以前から教育省の解体を望んいました。 なぜ、このような解体論が出てくるのかを理解するには、アメリカ合衆国憲法の Commerce clause を理解することが必要になるかもしれません。合衆国憲法第 1 編第 8 節 3 項には、外国との通商、州間での通商、州間にまたがる人と物資の交流にかかわる諸問題は、連邦議会が規制する権限がある旨規定しています。例えば、州間をまたがる電車や飛行機での移動に関しては連邦法で規制しますが、特定の州内で完結する行動などは、連邦法ではなく州法で規制することになります。つまり、連邦法ですべてについて規制できるわけではありません。この Commerce clause で連邦議会が規制できる範囲は、以前はかなり限定的に解釈されていましたが、 20 世紀の後半になると、連邦議会が規制できる範囲が広く解釈されるようになりました。 ただ、 1995 年に、連邦議会の法律によって制定できる法律の範囲外であると最高裁判所によって判断されたケースもあります( United States v. Lopez )。ここでは詳しく説明しませんが、許可されていない個人が、スクールゾーンで、弾が装填された又は安全が確保されていない銃器を故意に所持することを禁止した連邦法が Commerce clause によって連邦議会に与えられた権限を逸脱していると判断されました。 つまり、連邦議会は、 Commerce clause によって与えられた権限内の事項についてしか法律で規定することができないのです。 この Commerce clause の考え方は、教育については、州が決めることであって、連邦政府の関与は最小限にすべきという方向に働きます。 Commerce clause とともに議論されるの憲法の規定が、合衆国憲法第1編第8節18項の Necessary and Proper Clause で、連邦議会の立法権は、単に絶対的に...

議会が予算関連法案手続きに違反した場合どうするのか?―Points of order

  アメリカの予算決議に関連する文書等を読んでいると、 Points of order という単語を見かけることがあるかもしれません。英米法律語辞典によると、「議事進行上の問題、議事進行に関する意義」と記載されています。アメリカの議会に関して説明すると、 Points of order とは、 1974 年の議会予算法( Congressional Budget Act of 1974 )で特定の議会での手続きや立法の検討を禁止するものですが、実際にこれらの禁止規定を実行するためには、規則に違反する可能性のある行動や立法が下院または上院で審議されている際に、議員が異議申立て( points of order )を行う必要があります。 1974 年の議会予算法では、上院に関する points of order と下院に関する points of order 、両院で同じように適用される points of order が規定されています。 また、議会予算法には budget resolution (予算決議)に関する points of order (議会予算法 301 条、 305 条など)、 reconciliation bill (財政調整法)に関する points of order (議会予算法 310 条、 313 条など)が規定されています。 この points of order は議員の異議申し立てがあれば絶対に行使されるものではなく、上院でも下院でもこれを放棄するための手続きが規定されています。上院では議員の 5 分の 3 、つまり 60 議員の決議があれば、ほとんどの points of order を放棄することができます。下院では、特別な規則を議員の投票によって採用することによって、かなりの points of order を放棄することができます。 現政権が reconciliation bill によって減税法を成立させようとしている今、特に points of order 放棄のために 60 議員の決議を必要とする上院では、議会予算法で規定されている points of order が問題になることが多いかもしれません。

またしても伝家の宝刀?

  以前の投稿で、関税は一種の税金を課すことになるので、憲法上、関税を課す権限は議会にあるけれども、 議会が法律を制定して、その範囲内で大統領に関税を課す権限を与えることは可能であるというお話をしました。 ただ、アメリカには、 1977 年国際緊急経済権限法( 50 U.S.C. 1701-1707 )と国家緊急事態法( 50 U.S.C. 1601-1651 )など、大統領が緊急事態宣言を出すことを許す法律がいくつかあります。 2025 年 4 月 2 日、トランプ大統領は、これらの法律を根拠に緊急事態を宣言して、それを根拠として関税を課す大統領令に署名しました。いわば、伝家の宝刀ともいえる措置です。 これらの法律には、議会が緊急事態宣言を解除する手続規定もあります。上院がカナダに対する緊急事態宣言を解除するとの 「 Joint resolution 」(両院合同決議)を可決したのと同じような措置を取る可能性はありますが、下院が同様の措置を取る可能性はほとんどなく、また、 大統領が拒否権を行使すると両院の3分の2以上の多数で再度可決することが必要になり、事実上、現時点で、議会によって緊急事態宣言を解除することは不可能に近いです。 緊急事態宣言によって、大統領が個人で関税を課すのは、税金を課す権限は議会にあると定める憲法 Article 1 Section 8 Clause 1 に違反すると主張する議員もいますので、何らかの訴訟が提起される可能性もあります。ただ、アメリカの大手事務所に課した大統領令以降、大手事務所がこのような訴訟を受任する危険性が認識されるようになりました。   「 Joint resolution 」(両院合同決議)の説明については、 立法の形式は Bill だけではない?  をご覧ください。 緊急事態宣言を理由とする関税  も参考になります。

上院議員はどうやってカナダへの関税に反対したのか

 2025 年 4 月 2 日、上院議員がカナダへの関税に反対するために、投票を行い、共和党の上院議員も 4 名カナダへの関税に民主党に加わって反対したというニュースをお聞きになった方もいらっしゃると思います。 では、これは一体どのような手続きと投票を、どのような法律に基づいて行ったのでしょうか。 以前、「議会が緊急事態宣言を解除できるのか」という記事を書きました。その中で、トランプ大統領が、国家緊急事態法( National Emergencies Act 、略して「 NEA 」)と 国際緊急経済権限法 ( International Emergency Economic Powers Act 、略して「 IEEPA 」)を根拠として、緊急事態宣言を行い、それに基づいてカナダとメキシコからの輸入に対して関税を課したということをご説明し、大統領が行った緊急事態宣言を解除するにはどうすれば良いかというお話をしました。 宣言を行った大統領ではなく、議会が緊急事態宣言を解除する場合、 50 U.S. Code § 1622 には、「 Joint resolution 」(両院合同決議)が必要と規定されています。つまり、大統領の署名が不要な「 Concurrent resolution 」(両院共同決議)や「 Simple resolution 」(議院決議)では足りないということです。そこで、大統領が署名をしないで拒否権を行使した場合には、通常の法律と同じように両院とも 3 分の 2 以上で可決する必要があります。 今回上院で投票を行ったのは、 2025 年 2 月 1 日の大統領令で行った緊急事態宣言を解除するというシンプルで短い Joint resolution です。上院では、この Joint resolution が賛成 51 票、反対 48 票で可決されましたが、下院で可決される可能性は非常に低いです。また、たとえ、奇跡的に下院で可決されたとしても、大統領が拒否権を行使するでしょうから、それに対抗するには両院とも 3 分の 2 以上で可決する必要があります。 ですから、今回の Joint resolution によって緊急事態宣言が解除される可能性は、ほぼ 100 %ないと言えるでしょう。しかし、各議員の賛成反対を記録として残したり、...

Reconciliation Billは思惑通りに成立するのか?

  以前、共和党が減税法を成立させるには、 reconciliation bill を成立させなければなりませんという話をしましたが、実際にどのようにこの Reconciliation Bill が成立するのか、簡単に説明します。 まず、ここで混乱していけないのは、 Continuing resolution (一般に CR と呼ばれます)これは、会計年度の開始前に通常の appropriation bill (歳出法)が可決されなかった場合に、一時的に歳出を認めるものです。現時点では、次の会計年度まで(つまり 2025 年 9 月 30 日まで)の CR が可決されているので、 Government Shutdown (政府閉鎖)は回避され、これからが reconciliation bill の正念場です。 1974 年議会予算統制法では、いきなり reconciliation bill を起案することを認めておらず、まずは、 concurrent resolution (両院共同決議)で「 reconciliation instruction (財政調整指示)」が含まれている budget resolution (予算決議)が可決されなければなりません。 2025 年 2 月 21 日に上院で「 S.Con.Res. 7 」が可決され、 2025 年 2 月 25 日には、下院で「 H.Con.Res. 14 」が可決されました。 reconciliation bill を起案するためには、上院で可決された内容と下院で可決された内容が一致しなければなりませんが、この上院と下院で可決されたものはかなりの違いがあります。上院で可決されたものには、国防と国境地帯の安全に関する内容にフォーカスしていますが、下院で可決されたものは、トランプ大統領が望む内容が広く含まれています。そこで、上院と下院で内容を調整して再度可決する必要があり、 3 月末現在では、この調整段階にあります。 報道によると、共和党は、民主党の助けを借りずに共和党だけで reconciliation bill を成立させる意向のようで、調整は共和党内のみで行っているようです。 この調整が成功して両院で同じ内容の予算決議が可決された場合には、予算決議に含まれる reconciliat...