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これから本番のReconciliation Bill -減税法

  以前、「共和党はどうやって減税法案を成立させるつもり?」という投稿で、 1974 年の議会予算法( Budget Act )第 310 条で定められている「 reconciliation bill (財政調整法)」を使って減税法を成立させようとしていますという説明をさせていただきました。 Reconciliation bill では、上院での討論の時間が制限されているので、討論終結の決議に必要な 60 票が不要となり、上院でも過半数によって法案を可決することが可能になります。つまり 100 名の上院議員のうちトランプ大統領と同じ政党である 53 名の共和党所属の議員のみで、可決することが可能です。 ただ、以前ご説明した通り、いきなり reconciliation bill を起案して両院で可決するというわけにはいきません。まずは、両院で同じ内容の budget resolution (予算決議)を可決することが要求されますし、この予算決議には、特定の委員会にその管轄に関連する直接支出( direct spending )、歳入、または債務上限の法律を変更するための法律案を作成報告するように指示する「 reconciliation instruction (財政調整指示)」が含まれなければなりません。 当初、上院と下院で違う内容の budget resolution (予算決議)が可決されていましたが、 2025 年 4 月 10 日、下院が上院で可決された budget resolution (予算決議)を可決したことにより、最初のハードルを乗り越えました。次のステップとして、管轄のある委員会により reconciliation instruction (財政調整指示)に基づいて、法律案が起案され、それらが包括的( omnibus )な reconciliation bill にまとめられることになります。 現在、どのような reconciliation bill が出来上がって来るのか、皆が注目している段階です。 Congressional Research Service のレポートによると、歴史的には、 budget resolution が可決されてから reconciliation bill が成立するまで平均で 152 日かか...

連邦準備制度―Dual mandateとスタグフレーション

  前回、 Fed (米連邦準備制度)の主要な金融政策手段がフェデラルファンド金利の操作であることについてお話ししました。今回は、それに関連する Dual Mandate (二重の使命)と、近年懸念されているスタグフレーションについてご説明します。 金融政策は、 1977 年に制定された連邦準備制度理事会( Federal Reserve Board, FRB )の法定任務に基づいており、その任務は「雇用の最大化、物価の安定、および長期金利の中程度な水準の維持」を促進することにあり、雇用を最大限にすることと物価の安定は「 Dual mandate (二重の使命)」と呼ばれています。 通常は、景気が悪化して失業率が高くなれば、物価の上昇(インフレ)も落ち着く傾向にあります。このような状況では、金利を下げることによって、景気を刺激し、雇用を改善するという政策が有効です。 ただ、現在、関税や供給制約などの影響により、インフレと景気の停滞が同時に発生するスタグフレーションが起きるのではないかとの懸念が広がっています。同時に、 FRB が金利を決定する際に、この Dual mandate をどのように当てはめればよいのか議論されることが多くなってきた気がします。なぜなら、 Dual mandate の目標を一度に達成しようとすると、両目標がコンフリクト、つまり対立してしまう場合があるからです。例えば、インフレ抑制のために金利を引き上げることは有効とされますが、それにより既に停滞している景気がさらに冷え込み、失業率が上昇する可能性もあります。景気過熱によるインフレであれば金利引き上げは合理的ですが、景気が停滞して失業率が高いにも関わらず、何らかの原因でインフレが引き起こされている場合は、金利を上げることによって景気を冷やすと、さらに失業率が高くなる可能性があるからです。 このように、金利政策によって物価安定と雇用最大化という 2 つの目標達成が時に対立することがあり、 FRB の判断には高度なバランス感覚が求められます。そこで、 FRB の裁量が大き過ぎるのではないか疑問を投げかける人もいます。 また最近では、「 Dual Mandate には無理があるのでは?」という疑問から、物価安定のみを目標とする「 Single Mandate (単一の使命)...

連邦準備制度―Federl Reserve System

  最近、連邦準備制度理事会議長であるジェローム・パウエル氏をトランプ大統領が解任するかもしれないというニュースによって株価が急落し、大統領が解任する予定はないと発言したことで株価が回復したということがありました。今日は、この連邦準備制度について少し説明したいと思います。 連邦準備制度は、 1913 年の連邦準備法( Federal Reserve Act of 1913 )によって、アメリカの中央銀行として設立されました。連邦準備制度は、ワシントン D.C. にある理事会( Board of Governors )の監督のもと、 12 の地域連邦準備銀行で構成されています。理事会は、大統領によって指名され、上院によって承認された 7 人の理事で構成されます。大統領は理事の中から議長と二人の副議長を選出し、上院の承認を得ます。地域連邦準備銀行の総裁は、それぞれの銀行の理事会によって選ばれ、連邦準備制度理事会の承認を得て任命されます。現在の連邦準備制度理事会議長はジェローム・パウエル氏( Jerome Powell )です。理事の任期は再任不可の 14 年間であり、議長および副議長の任期は再任可能な 4 年間です。ジェローム・パウエル氏の議長としての任期は、 2026 年の 5 月 15 日までですが、 14 年である理事の任期は 2028 年 1 月 31 日までなので、議長の任期終了後も理事の任期が続きます。理事は「正当な理由」( for cause )がある場合に限って解任可能で、他の政治任命職に適用される「随意解任」( at will )基準よりも厳しい基準です。 一般に、連邦準備制度の政策は理事会によって策定され、地域連邦準備銀行によって実行されます。ただし、金融政策に関する決定は、連邦公開市場委員会( Federal Open Market Committee 、 FOMC )によって行われます。 FOMC は、 7 人の理事、ニューヨーク連邦準備銀行の総裁、およびその他の地域連邦準備銀行の総裁のうち 4 人で構成されます。この 4 つの議席は、他の 11 の地域銀行の間で交代制となっています。 FOMC は、少なくとも 6 週間ごとに会合を開き、金融政策の方針を見直します。 Fed の主要な金融政策手段は、 federal funds...

関税の悪影響

  連邦準備理事会( Federal Reserve Board ( FRB ))議長のパウエル氏が関税によってインフレが引き起こされるかについて述べており、関税による値上げが一時的なものになる可能性と、その他の事情によってインフレを引き起こす可能性があることを指摘していました。 それを、自分なりにかみ砕いて理解してみました。 まず、関税率が低い場合は、例えば5%以下の場合は、それに伴って一度だけ値段を上げて消費者に転嫁すればよいので、その後、関税による継続的な値上げの必要はなく、値上げは一過性のものになる可能性が高いです。しかし、関税率が高い場合、例えば20%以上の場合、それを一度にすべて消費者に転嫁することによる消費者離れを防ぐ必要があり、少しずつ何度かに分けて値上げをしていくことになります。また、何回かの値上げで関税分をすべて転嫁した場合であっても、当初転嫁できなかった部分の損失を取り戻す必要性から、さらに値上げをする可能性もあります。すると、インフレ傾向がかなり長期にわたって継続することになり、インフレは一過性のものではなくなります。   また、インフレとは別に、関税の悪影響として、 Corruption (汚職)の温床となりやすいということを指摘する人が多くいます。その根拠は、最初のトランプ政権で、アルミニウムとスティールに関税がかけられた際には、 Exclusion という例外措置を申し立てる手続きがありましたが、トランプ大統領が所属する政党である共和党に献金した会社の方が、民主党に献金した会社と比較して、例外措置を認められる確率が圧倒的に高かったと指摘によります。

下院本会議での審議方法 -Suspension of rulesとSpecial Rules

アメリカの下院議院の本会議の審議での手続き(法案補正の方法や議論の時間や配分等)について、「 Suspension of rules 」という方法で審議される場合が結構あります。この Suspension of rules で審議される場合は、討論の時間が合計で 40 分に制限され、本会議での補正が認められません。ただ、 Suspension of rules での審議をすることについては、下院議長しかその申立てをすることが出来ないだけでなく、 3 分の 2 の多数で可決される必要があります。必然的に両党で明確な争い等がない法案の審議での方法となります。 では、 Suspension of rules で審議が出来ないような場合は、どのような手続きで審議するのでしょうか。その法案ごとに下院議院の Special Rules による審議が一般的です。この手続きによる場合、まずは、 Special Rules を定め、それを承認するかについて投票を行い、多数決で可決した後に、その手続きに基づいて本会議の審議を進めることになります。 Special Rules で決定される事項の例としては、法案を審議する際に下院が使用する手続き上の枠組みを特定すること、一般的な討論の時間やその配分について、討論及び対象と対象となる基本法文を定めること、修正手続きの内容を明確にし、既存の規則を調整または免除し、異議申立て( Point of order )が提起されるのを制限すること等が含まれます。 上院では、原則として討論の制限時間が定められておらず、討論終結動議 (cloture) を 5 分の 3 以上( 60 票)の投票で可決しないと法案自体の投票に進むことが出来ませんが、下院では、討論の制限時間が決められます。通常、関連する委員会の議長(多数党)と Ranking member (少数党)が決められた時間を各党で管理します。 既存の規則の調整または免除についてですが、例えば、下院の規則では本会議での審議の 72 時間前までに委員会のレポートがアクセス可能になることが要求されていますが、 Special rule でそれを免除することも可能です。 討議の対象となる基本法文についてですが、最初に法案が下院に Introduce された後に、委員会で補正されている...

アメリカで法律はどうやって成立するのか?

  アメリカでは法律はどうやって成立するのかというのを非常に簡単に説明すると、上院と下院で、同じ内容の法案を可決して大統領が署名することで法律が成立するのですが、ここでは、もう少し詳しく一般的な手続きの流れを説明させていただきたいと思います。 まず、法律制定手続きが開始されるためには、下院でも上院でも、法案が議員によって各院に introduce ( 提案 ) される必要があります。共和党の議員と民主党の議員が co-sponsor となって、法案を introduce し、超党派の法案であることを強調することも多いです。 Introduce した議員の名前が法律の名前として呼ばれることもあります。例えば、日本でも日本版バイドール法と言われる Bayh-Dole 法は、民主党の Birch Bayh 議員と、共和党の Bob Dole 議員が co-sponsor となって提案された法律で、両議院の苗字をとって、 Bayh-Dole 法と言われています。 一般的に、法案が introduce されると、下院では Speaker (議長)が、その法案の内容を管轄する委員会( committee )に付託( refer )します。各委員会の議長( chair )は多数党所属議員で、 Ranking member は少数党所属議員となります。この委員会の Chair は、何を審議するか、また審議の優先順位を決める権限があります。 introduce された法案をそのまま放置することも可能です。上院でも同じように委員会( committee )に付託( refer )されることが一般的ですが、一定の条件のもと直接上院のカレンダーに予定を入ることも可能です。 委員会が当該法案を取り上げると決定した場合は、公聴会( Hearing )が開かれることが一般的です。当該事項に関する専門家やその法案によって影響を受ける利害関係者等に質問をすることになります。 次は、公聴会によって得た情報をもとに、法案に修正を加えることになります。委員会が、公聴会と法案修正を小委員会に任せることも一般的に行われます。 その後に、下院では、委員会が下院に報告をして、下院のカレンダーに予定を入れます。カレンダーに予定が入ったからといって、下院でその法案が審議されるとは限りません...

巨大法律事務所を半国有化したに近い??

トランプ政権が、いくつかの巨大法律事務所をターゲットに大統領令を出したり、目を付けられた法律事務所が大統領令を見据えて交渉したりと、アメリカの巨大法律事務所の形が変わり始めていることを以前の投稿で説明しました。 アメリカの CNBC というテレビ局で、 Kirkland & Ellis ( 所属弁護士 3500 人以上 ), Allen Overy Shearman Sterling ( 所属弁護士約 4000 人 ), Simpson Thacher & Bartlett ( 所属弁護士約 1500 人 ), Latham & Watkins ( 所属弁護士約 3000 人 ), Cadwalader, Wickersham & Taft ( 所属弁護士約 400 人 ) と和解が成立し、 DEI (多様性・公平性・包括性)プログラムを廃止することと政権のためにプロボノ活動(無償サービス)を提供することを約束し、その無償サービスの総額は 5 億ドルを超えるということが報道されていました。 政権のためにプロボノ活動をすることによって、どのような影響が及ぶか、自分なりに考えてみます。まずは、 Conflict of interest (利害相反)の問題が発生するために、弁護士倫理の問題から考えても政権を相手方とする仕事を引き受けるのが難しくなるということがあげられます。今回ターゲットにならなかった法律事務所も、今後トランプ政権のターゲットにならないように、受任する事件を選択するよう萎縮する可能性もあります。 また、今まで、連邦政府から仕事を請け負っていた事務所が、 5 億ドル分の仕事を失う可能性があるでしょう。ターゲットにならなかった事務所であっても、連邦政府の仕事を有償で請け負っていた事務所は仕事量が減る可能性があるので、安心してはいられないでしょう。この観点からいうと、連邦政府が巨大事務所に無償で仕事を請け負わせることで一部国有化したに近いような状態が発生します。 CNBC でもそのようなニュアンスの感想を述べていました。 さらには、巨大法律事務所がプロボノで働いた時間をどこかで埋め合わせる必要が生じることによって、既存のクライアントがその分の負担を負わされる可能性ががあります。つまり、通常のクライアントに対して、ア...

教育省を解体する発想はどこから来るのか?

 3 月 20 日にトランプ大統領がアメリカ連邦行政機関の一つである教育省を解体する旨の大統領令に署名したというニュースは、日本人の感覚では理解しがたいことかもしれません。しかし、教育省を解体すると言い出したのは、トランプ大統領が最初ではありません。レーガン大統領も教育省の解体を主張していたり、共和党内の保守派は、以前から教育省の解体を望んいました。 なぜ、このような解体論が出てくるのかを理解するには、アメリカ合衆国憲法の Commerce clause を理解することが必要になるかもしれません。合衆国憲法第 1 編第 8 節 3 項には、外国との通商、州間での通商、州間にまたがる人と物資の交流にかかわる諸問題は、連邦議会が規制する権限がある旨規定しています。例えば、州間をまたがる電車や飛行機での移動に関しては連邦法で規制しますが、特定の州内で完結する行動などは、連邦法ではなく州法で規制することになります。つまり、連邦法ですべてについて規制できるわけではありません。この Commerce clause で連邦議会が規制できる範囲は、以前はかなり限定的に解釈されていましたが、 20 世紀の後半になると、連邦議会が規制できる範囲が広く解釈されるようになりました。 ただ、 1995 年に、連邦議会の法律によって制定できる法律の範囲外であると最高裁判所によって判断されたケースもあります( United States v. Lopez )。ここでは詳しく説明しませんが、許可されていない個人が、スクールゾーンで、弾が装填された又は安全が確保されていない銃器を故意に所持することを禁止した連邦法が Commerce clause によって連邦議会に与えられた権限を逸脱していると判断されました。 つまり、連邦議会は、 Commerce clause によって与えられた権限内の事項についてしか法律で規定することができないのです。 この Commerce clause の考え方は、教育については、州が決めることであって、連邦政府の関与は最小限にすべきという方向に働きます。 Commerce clause とともに議論されるの憲法の規定が、合衆国憲法第1編第8節18項の Necessary and Proper Clause で、連邦議会の立法権は、単に絶対的に...