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ロシアのウクライナ侵略に関して

 2021 年 12 月、事務所のクリスマスパーティーで、事務所のロビーストが、「今度の冬のオリンピックが終わったら、ロシアがウクライナに侵略すると思うのよ。かなりの確率で。」と言っていました。そのロビーストは、実際にロシアがウクライナを侵略した時には、事務所を移籍していたので、何故あれほど確認を持って話していたのかを聞くことはできませんでした。ただ、あれ以来、毎年この時期になると彼女の言葉を思い出してしまいます。 ウクライナ侵略直後に、ジェトロから依頼を受けて、事務所の他のロビーストとウエビィナーをすることになりました。準備として、アメリカの公共放送である PBS がノーカットで公開していた、数多くの政府関係者やロシア生まれのジャーナリスト等のインタビューを少なくとも 20 時間以上聞きました。プーチン大統領の KGB 時代の話から侵略直後の話まで、プーチン大統領の行動の全貌が分かるような内容でした。 これらを聞いた後、確信できたことは、この戦争は、ウクライナが白旗でもあげない限り、そう簡単には終わらないということでした。当時、ウクライナ戦争は、結構簡単に終わるかもしれないと、様子見をしている企業も多かったと思いますが、続くことを前提に経営判断をする必要がありますとお伝えしたかったです。 2025 年は、良い年になるとよいです。

下院議長はどうやって選ぶ?

  下院議長は、正式には、「 speaker of the United States House of Representatives 」ですが、ニュースなどでは、「 speaker of the House 」と言われることが一般的です。この下院議長には、重要な役割があり、会期が始まって、まずは下院議長を選任しなければなりません。 下院議長の議長としての権限については、別にお話しする予定ですが、大きな権限を有するので、誰が選ばれるかについては注目が集まります。現在共和党議員が多数ですが、民主党議員の人数とが僅差である次期議会では、特に下院議長の選挙に注目が集まっています。 現在の下院議員数は、 435 名ですが、下院議長の議長として選ばれるためには、過半数、つまり、 218 票が必要になります。つまり、例えば、 A さんに投票する議員と、 B さんに投票する議員と、 C さんに投票する議員がいて、 A さんも、 B さんも、 C さんいずれも過半数の票を獲得できなかった場合、議長が選ばれないという問題が生じます。そこで、共和党内が多数党であるとはいえ、一部でも、他の人に投票する人がいれば、議長が選任されないことになります。その場合、時間をおいて、その間に、党内で調整や説得を行い、再度投票を繰り返すことになります。 Kevin McCarthy 議長も、 Mike Johnson 議長も、複数回の投票が必要だったのは、記憶に新しいです。 因みに、下院議長は、通常下院議員の中から選ばれますが、必ずしも下院議員である必要はありません。

本来の目的と違ってしまったかも?Reconciliation billとは何?

 Congressional Budget Act of 1974 で作り出された reconciliation bill は、党派間の分裂が進んで超党派で合意できる事項がますます少なくなってきた現在では、本来の目的とは少しずれた奥の手として使われるようになってきています。 1974 Budget law は、 budget reconciliation というオプションを規定しました。 Congressional Research Service のレポートでは、 reconciliation の主な目的は、 収入と支出の水準を予算決議の政策に一致させる必要から、現行法を変更するための議会の能力を強化するこ とと記載されています。つまり、 収入と支出に変更が発生する場合等にそれを調整するための手段として、特に国の債務を減らすための調整する手段として、議会に与えられた権限だったはずでした。 しかし、 党派間の分裂が進んで超党派で合意することが難しくなっている現在では、上院でのフィリバスターを回避するための奥の手として使われるようになってきています。フィリバスターとは、上院議員の法案に関する議論を止めさせて決議に移るためには、 100 名の上院議員のうちの 60 票が必要になるというものです。端的に言ってしまえば、 60 名の上院議員の賛成がなければ法案が可決されないということです。最近では、共和党、民主党の上院議員の数が拮抗していて、どちらかの政党が 60 票を獲得するのは珍しくなってきています。そこで、この reconciliation bill の手続きを使って、多数派の政党が、自分たちの政策を達成してしまおうとすることが頻繁に起こるようになりました。 例えば、 2017 年の最初のトランプ政権下で成立した減税法は reconciliation bill ですし、 2022 年のバイデン政権下で成立した Inflation Reduction Act も reconciliation bill です。二度目のトランプ政権で上院の多数派は共和党ではありますが、 60 には届かない人数ですから、今後もこの reconciliation bill が使われることでしょう。

大統領が法案の一部に拒否権を行使することは可能?

  法案は、上院と下院の両院で可決されただけでは、法律として成立しません。もし、大統領が議会で可決された法案をに対して Veto (拒否権行使)したら、議会に戻されて、拒否権行使に耐えられる数の賛成票で再度可決されなければなりません。 もし、議会で可決した一つの法案の中に色々な内容が組み込まれていて、一部は大統領の意向に沿う条項が含まれていたけれども、一部には意向に反する条項が含まれていた場合は、どうするのでしょうか。大統領が意向に反する条項のみに対して拒否権を行使して、残りの条項だけを承認して署名することはできるでしょうか。このような形の拒否権行使を Line-item veto と呼びます。 実際、クリントン大統領の時代である 1996 年にこの Line-item veto 認める法律が制定されました。それによって、クリントン大統領は、法案の一部について拒否権を行使しましたが、後に、最高裁判所によって、 Line-item veto は憲法に反すると判断されました( Clinton v. City of New York )。つまり、大統領は、法案を一括で承認するか、一括で拒否権を行使する権限しか与えられておらず、一部だけを拒否することはできないということです。ただ、複数の過去の最高裁判例を覆している現在の最高裁判所は、再び Line-item veto が問題となって、最高裁判所での判断が必要になった時に、過去の判断を維持するのでしょうか。

Government Shutdown (政府閉鎖) とDebt Ceiling (債務上限)の問題は何処が違う?

  アメリカで Government Shutdown ( 政府閉鎖 ) になるかもしれないと、ニュースで騒がれている時と、 Debt Ceiling ( 債務上限 ) に達するのが近づいているとニュースで騒がれていることがあるが、この二つは別の問題であることを理解しておくのが重要です。実際に、今まで、政府閉鎖になったことは何回かありますが、債務上限に達してしまって、これ以上国が借金できなくなる状態に陥ったことはありません。 政府閉鎖をシンプルに説明してしまうと、連邦政府の資金拠出を許す法律が議会を通過しなかったために政府が支出できなくなり、重要性が高くない政府の職員が一時休職となり、政府サービスの提供が停止したり、重要性の高い政府の職員が、給料を支払われないまま働くことを求められることになります。これ自体深刻ではあるのですが、債務上限に達する影響に比較すれば、深刻度が低くなるので、一時的な政府閉鎖は、今まで何度か発生しています。 これに対して債務上限に達するということはこれ以上政府が国債などを発行することが出来なくなることを意味し、アメリカ政府が債務不履行(デフォルト)を起こしてしまう可能性が高くなります。これを回避するためには、議会が債務上限を引き上げるか、停止するか、債務上限を完全になくす決議をする必要があります。議会が、債務上限に達するのを避けるための合意が出来なかった場合、デフォルトになるという最悪のシナリオがあるので、実際に債務上限に達する前に議会によって問題が解決された場合でも、それが期限間近まで合意できなかったことによって、アメリカの国債の信用格付けが下がったことがあります。

大統領は自由に関税をかけることが出来るのか?

  アメリカは、建国当時から絶対的権力を持つ王を作らないために、国の権限を分割して別の機関に与えるという発想がありました。今でも、大統領が全てなんでもできるような制度にはなっていません。関税をかけることも同じです。ですから、次期大統領がこれをやるとか、あれをやると言っていても、実際それがどの程度容易にできるのかを知るために、制度を知ることは重要です。 現在、大統領が議会の承認なしに関税をかけることができる根拠として知られているのは、通商法 301 条と通商拡大法 232 条です。ここで、これらの法律の内容には触れませんが、大統領はこの法律の権限内で関税をかけることが出来ます。その範囲を逸脱した場合、裁判所に訴えられる可能性が出てきます。ただ、その判決が出される前に、関税措置が一時停止されるかどうかは、また別の問題です。という感じで、立法、司法からのチェック・アンド・バランスが働くことになっています。 中国については、既に議会での動きがあって、中国に対する最恵国待遇を廃止する法案が下院で出されています。 https://selectcommitteeontheccp.house.gov/media/press-releases/moolenaar-introduces-legislation-revoke-chinas-permanent-normal-trade

大統領は何ができる?

  大統領になったら、〇〇と○○と○○を絶対やるっと宣言することは簡単ですが、実際に実現可能性が高いかどうかは、また別の問題です。アメリカの政治システムを理解することによって、各公約の難易度を知ることができます。 つまり、大統領が大統領令を出すだけでできてしまうこと、議会の中の上院下院両方で、通常の多数決で決定することでできること、議会の下院は多数決で決定できても上院ではフィリバスターがあるため 5 分の 3 以上の多数によって決定しなければならないこと、また、憲法を修正しなければ出来ないこと、等々、難易度には、様々な段階があります。 また、大統領が法律の範囲内でできることであれば、その法律の解釈をどうするのか、判例はどうなっているのか、最高裁まで行くと以前の先例が覆される可能性が高いのか等も難易度に影響を及ぼします。 トランプ政権が、あれをやるとかこれをやると宣言していることで身構えていらっしゃる企業の方も多いかと思いますが、政治システムを熟知することで、何については、起こる可能性が高くて、何については起こる可能性が低いのかを知ることができ、それに基づいて対策を練ることが出来るようになります。 アメリカの政治システムを知ることはビジネス判断に役に立つでしょう。

大統領を議会が選ぶ?

  アメリカの大統領は 4 年に 1 回、国民の選挙によって選ばれるということは皆さんご存知だと思いますが、アメリカの大統領を議会が選ぶ可能性があり得るということはご存知でしょうか。アメリカの大統領選挙は間接選挙で、国民は各州の選挙人を選んで、選挙人が大統領に投票します。大統領に選ばれるためには、この選挙人団の過半数である 270 票以上を獲得しなければなりません。もし、過半数に達しなかった場合には、下院が大統領を選任することになります。 アメリカが二大政党制度になっていて、第三の政党が発生しない理由が分かる気がしますね。もし、 3 つ目の政党が若干でも選挙人の票を獲得した場合、過半数に達しない可能性が高くなり、下院で大統領が選任される可能性が高くなりますから。