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一票の重さが全く違う上院と下院

  アメリカ議会には上院と下院があり、日本の参議院と衆議院と同じようなものではないかと考えていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、全く異なります。 大きな違いの一つとして、一票の格差があります。 人口が一番多い州はカリフォルニア州で、最も少ない州はワイオミング州で、その人口差は大雑把に計算すると 70 倍近くになります。こんなに人口差があっても、上院の議員は各州 2 名ずつなのです。つまり、カリフォルニア州の上院議員も 2 名しかいませんし、ワイオミング州の上院議員も 2 名なのです。日本の選挙で、一票の格差がどのくらいになると憲法違反かが問題になり、参議院の方が衆議院よりも格差が少し広くても構わないといって、 3 倍くらいでも憲法違反にならないとの判断がありますが、アメリカの上院の一票の格差は、そんなものではありません。何十倍の格差になります。それだけの格差があって選ばれても、実際に上院の議員としては一議員一票ですから、すごいです。 ところで、上院が出来た当初、上院議員は国民による選挙で選ばれていたわけではなく、州議会等で選出されていましたが、アメリカ合衆国憲法修正 17 条で変更され、州の国民による選挙で選ばれるようになりました。 下院は人口 比 によって各州から何人の議員が選出されるのかが決まりますが、たとえ人口が少なすぎて単純に計算して一人も議員を選べない州であっても、各州から必ず一人以上は下院議員が選出されます。 上院と下院にこのような違いがある理由は、人口の多い州と少ない州とで、どのように議員を選ぶか議論された時の妥協策であったということと、一カ所に権限を与えすぎないための方策であったという二つの理由があったと言われています。

ESGに反対?!

  日本では、ビジネス界が ESG とか温暖化対策とか、声高々に唱えています。日本のニュースでは ESG という言葉が飛び交っています。ですから、アメリカで ESG に反対する動きや、温暖化の原因は化石燃料の使用にあるという科学者の意見に反対する人がかなり多くいますと説明すると、信じてもらえないことも多いです。 アメリカでは、特に政治的な主張として反 ESG を唱える政治家はかなりの数います。そのような人たちの前で、 ESG の重要性を力説しても、その場をしらけさせてしまいます。ですから、特に共和党の議員と面会する機会がある日本のビジネスパーソンは、その場で ESG という言葉で説明しても大丈夫なのかどうか、事前に下調べをしておく必要があるでしょう。「クリーンエネルギーの説明をする際に ESG という話をしなければ、ビジネスができないではないか」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはありません。 例えば、共和党が大勢を占めていて、反 ESG という概念が浸透しているテキサス州では、太陽光発電が盛んです。要するに、経済が繫栄して雇用が増えて、政府から補助金が得られてお金が儲かるという話し方でビジネスを進めていけば、たとえ、政府が補助金を出すことにした根底にある概念が ESG であったとしても、そのあたりは無視してビジネス上の利点で判断をするわけです。 つまり、アメリカでビジネスをするには、政治問題や政治的な概念に足を踏み入れないようにして、このプロジェクトは相手方にビジネス上どのような利点をもたらすのかに焦点を当てて、話を進めていくことが非常に重要ですね。

米国上院のフィリバスター(filibuster)って何?

  米国議会の上院には filibuster フィリバスターという手段があります。誤解を恐れずに簡単に説明してしまうと、法案に関する議論が終わらないようにして、法案の投票を遅らせる手段です。議論を終わらせるためには上院議員の 60 票が必要になります。そこで、ニュースでは 60 票の賛成がないから上院では可決されないと説明されることがあります。以前は、フィリバスターを続けるために本当に何時間も上院で演説を続けていた議員もいたようですが、今では、上院規則に基づいてフィリバスターを宣言してしまえば、 60 票確保できない場合には、投票がおこなわれません。昔のように実際に議員が上院で演説を続けているわけではありません。 ただ、フィリバスターが使えない法案もあります。例えば、予算手続きがそれにあたります。フィリバスターが使えないと、通常多数決で決まることになりますが、上院は 50 の各州から二人ずつの議員が選任されることになるので、票が 50 対 50 になることもあります。そうすると、副大統領が最後の一票を投じることになります。基本的に副大統領の役割はあまりないのですが、この時ばかりは副大統領の存在が重要になります。 2022 年に成立した Inflation Reduction Act はハリス副大統領が一票を投じた形で成立しています。これに対し、オバマケアと呼ばれている Affordable Care Act は、上院で 60 票で可決されています。オバマケアは制定後、何度も潰されそうになりましたが、フィリバスターに負けない 60 票で上院を可決したこともあって、今も残っています。

大統領と議会の対立 - 与党と野党???

  日本のメディアが、「アメリカの与党」と記載しているのを目にしたことがありますが、非常な違和感を覚えます「どっちが与党で、どっちが野党なんだ???」という感じです。アメリカでは大統領が所属する政党と下院の多数派政党や上院の多数派政党が異なるということは、頻繁に起こります。 The American Congress という本に 1969 年から 2019 年までの議会の会期で大統領の所属政党と議会の多数派政党がどうであったか表が掲載されているのですが、 Unified (一致)となっているのは 7 会期のみで、残りの 19 会期は Divided (不一致)となっていて、 70% 以上で同じではないことが分かります。 現在 2024 年 10 月現在、大統領の所属する政党は民主党で、下院の多数政党は共和党です。ですから下院の議長は、共和党議員です。大統領に何かあって職務を遂行できない場合に、大統領の職務を遂行するのは副大統領ですが、副大統領にも何かあって職務が遂行できなくなった場合には、下院議長が大統領の職務を継承します。つまり、下院議長は継承順位で2番目のポジションにあります。このようなポジションにある人と、大統領の所属する政党が異なることが頻繁に起こるというのがアメリカ政治の現実です。特に、大統領選のない中間の時期に行われる議員選挙の後では、下院議員の多数派と大統領の政党が異なることが多いです。   日本のメディアの方々は、多分、大統領所属の政党を与党と呼んでいらっしゃるのだと思いますが、日本の政治で言う与党や野党のように理解すると、アメリカの政治の理解を誤ってしまうかもしれません。   *The American Congress (Steven S. Smith, Jason M. Roberts, Ryan J. Vander Wilen)

米国政治は日本ビジネス界に影響大 ~アメリカでビジネスをしていない企業にも影響~

  とある日系の団体のワシントン DC オフィスの所長さんが、「ビジネスをするにあたって政治を注視しなければならないのは政治が不安定な新興国だけかと思っていましたが、その考えは間違っていました。実はアメリカの政治こそ注意しなければならないというのを DC に来て初めて理解しました。」とおっしゃっていましたが、まさしくその通りだと思います。 アメリカの政治はビジネスに直接影響することが多いです。大統領選挙の年に日本スティールが US スティールを買収するという発表がなされ、両党の大統領候補が、買収に反対すると宣言したのは、記憶に新しいところでしょう。 アメリカ政治が影響するのはアメリカでビジネスをする場合だけ、うちは、アメリカでビジネスをしていないので関係ないと思っていらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、それだけではないのです。例えば、アメリカの中国に対する政策が、中国とビジネスをする日本企業に影響を及ぼしたり、アメリカのロシアやイランに対する制裁が、ロシアやイランとの関係を持つ日本企業に影響を及ぼしたりします。アメリカは世界第一の経済大国ですから、アメリカの政策が世界の色々な国に影響を及ぼすのです。人口減少から市場が縮小している日本は、巨大な市場である中国を無視できませんし、天然資源がほとんどないので、資源国であるロシアや中東を無視できません。アメリカのこれらの国々に対する政策が、これらの国々とビジネスを行っている日本企業に直接影響を及ぼしうるのです。ある程度の規模のビジネスであれば、ビジネス判断をするにあたってアメリカの政治は無視できないものだと思います。